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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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果てしなく遠回りな?プロポーズ2

「えーと、わたしは……ミックから、このアメジストの指輪を貰いました。以上です!」

 さっさと自分の回を、終了させようとするユナに、


「ユナったら――恥ずかしがり屋さんね?」

 シャーロットが、慈愛に満ちた顔で微笑み、


「もっと詳しく! どこでいつ、どうやって貰ったの?」

 ヴァイオレット先生が、厳しく追及する。


「それは、その……バレンタイン当日の夕食後、裏庭のベンチで」

 覚悟を決めた侍女が、もじもじと、話しはじめた。



◇◆◇◆◇

 使用人食堂から、母屋に戻る途中、いつも寄る裏庭の、生垣の奥にあるベンチ。

 周りの生垣と兎小屋が、風よけになって、真冬でも、さほど寒くはない。


 蓋付きマグカップに入ったミルクティーを、走って厨房から、持って来てくれたミックが

「ほら、首元冷やすと、風邪ひくから」

 と、自分のマフラーを、ぐるぐる巻いてくれて。


「いやいや、これじゃミックが、風邪ひくでしょ?」

 半分こで、巻き直して。

 ショールやひざ掛けにくるまれて、ぴったりくっついて座ると……ちょっと照れるけど、すっごく幸せ。


 ティータイム時の、いちゃいちゃ領主夫妻の話で、盛り上がっていた時(『ユナったら、恥ずかしいわ!』シャーロット談)


「それでね、ケーキ作りしているお嬢――いえ奥様も、めちゃめちゃ愛らしくて……

 あっ、忘れてた! ハッピー・バレンタイン!」

 小さな手提げを探ったユナが、手作りカップケーキを、あわてて差し出すと


「おっ、ありがと! 美味そう♪」

 受け取ったミックが、ラッピングを解き、早速、ぱくっと一口。


「どうかな……? 美味しい?」

 心配そうに、尋ねるユナに

「うん……! 美味いよ! 甘さ控えめで」

 粉砂糖の付いた唇の端を、親指でぬぐいながら、答えたミック。

 はっと何事かに、気付いた顔で


「待った、これ――ウィルフレッド様が、貰ったのと同じ……?」

「そぉ! 『ケーキ教室』で、シャーロット様と一緒に、作ったの」

「あーーっ! マジでかーっ!!」

 ユナの返事に、かぶせ気味に叫んだ。



「どしたの⁉ やっぱあんまり、美味しくなかった?」

「いやっ、美味いよ! そこじゃなくて……じゃあこれって、『ユナの手作り』、だよね?」

「そうだけど?」

「しばらく……最低でも一年位。

 記念に、飾って置きたかった」

 しょんぼりと、うなだれる、ミック。


「一年って――カビ生えちゃうよ⁉」

 敏腕でスパダリのくせに、時々ポンコツになる婚約者。

 ユナが思わず、吹き出せば、

「そっか……じゃあせめて。残りは大事に、味わって食べるな?」

 素早く立ち直ったスパダリが、照れた様に、目を細めて笑った。



 大切そうに、包み直したケーキを、横に置いて、上着の内ポケットを、探るミック。

「じゃあ……これは、俺から」

 取り出したのは、小さなジュエリーボックス。

 ぱかんと開けると、紫の石が輝く、シンプルな銀の指輪が、鎮座ちんざしていた。


「きれい……」

 ほうっと、ため息を吐くユナの左手を取って。

 前から付けている、透かし彫りの指輪を、優しく、親指で撫でる。

「『婚約指輪は、これでいい』って、ユナは言ったけど。やっぱ、きちんとしたのを贈りたくて」



 ユナのほっそりした薬指に、二つ目の、指輪が通った。

 前の指輪に重ね付けしても、しっくりと馴染むデザイン。

「わあっ……すっごくステキ! ありがとう、ミック!」

 嬉しそうに、左手を伸ばして、見上げるユナを

「気に入った?」

 優しく見下ろすミック。


「うんっ! これって、アメジスト?」

「そう。店ではダイヤか、目の色に合わせたエメラルドを、勧められたけど――ユナなら、こっちかなって。

 だって……」


「「推しカラーだから!!」」

 声を揃えて叫んだ後、二人顔を見合わせて、思い切り笑った。



 ◇◆◇◆◇

「報告は以上です!」

 最後の『推しカラー』の所だけぼかした、ユナの話が終わって、

 ぱちぱちと、拍手をしながら。


「ミックって、『仕事出来るし、かっこいい!』って、村の女子の間でも、大人気だけど……あんな、ポンコツになるの?」

「えぇ、たまに。ユナが絡んだ時、だけ?」

「なるほど。クリスマスプレゼントのマフラーも、『一生、使う』とか、宣言したんだっけ?」

 小声で話しながら、くすくすと笑う、先生と奥方に


「そこっ――聞こえてますよ!」

 真っ赤になった、ユナが叫んだ。



「さぁ、次はいよいよ」

「ヴァイオレット先生の番ですね!」

 わくわくを隠せない、主従の前のテーブルに


「わたしが今年のバレンタインに、ジェラルドから頂いたプレゼントは――これよ?」


 先生は、小さな『木彫りの人形』を、ことりと置いた。



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