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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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【番外編6】果てしなく遠回りな?プロポーズ1

今回は、ちょっと長めの全5話。

前半は、バレンタイン後の女子会。

後半は、ジェラルドとヴァイオレット先生の、恋のお話です。


毎日更新しますので、よろしかったら、お立ち寄りください。


 2月最後の日曜日。

 ヘア村の学校教師で、ミックの母親でもある、ターナー先生のこぢんまりした家に、領主夫人とその侍女が訪れた。


 ノッカーの音に答えて、玄関扉を開けたのは

「いらっしゃい……! シャーロット、ユナ!」

 この家に下宿している、やはり教師で、シャーロットの元家庭教師でもある、ヴァイオレット・シープ。


「さぁ、どうぞ! ターナー先生は、メイドのアガサと、夕方までお出かけなの」

 にんまりと笑って

「だから思う存分、『バレンタインデー報告会』が、出来るわよ……!」

 わっと、二人からも、楽しそうな歓声が、上がった。



 居間兼客間に移動して、ユナが入れたお茶を飲み、サンドイッチやケーキを摘みながら、近況を報告し合って。


「先生、ステキなブローチ――お花の形がキレイだわ!」

「下に付いてる、小さな時計も、可愛いですね!」

「ありがとう、二人のストールもステキね! 色違いのお揃いで。それぞれ、よく似合ってるわ」

「まぁ、嬉しい!」

「お嬢――奥様からの、ニューイヤープレゼントなんですよ!」

 お互いの、オシャレのポイントを褒め合ってから。

 いよいよ本題に……。



「それでは……まずは、わたくしから!」

 シャーロットが珍しく、積極的に名乗り出た。


「いつもだったら絶対、恥ずかしがるのに?」

「それだけ――嬉しい、プレゼントだったんですよ!」

 先生とユナが、こそこそ話している間に、手提げから取り出した、箱を開けて。


「わたくしが、ウィルから頂いたのは……こちらの『ガラスドーム入り置物』です!」

 ほんわり頬を染めた、領主夫人が、両手で掲げて見せた。



「あらっ、可愛い! 良く見せて……? まぁ、この子ウサギ達の、愛らしいこと! 

 それに細かい所まで、とっても丁寧に出来てる――この帽子とか、グッドだわ!」

 意外と、可愛い小物に目が無い、ヴァイオレット先生。

 受け取った置物を、様々な角度から、楽しそうに眺めながら、ふと気が付く。


「ちょっと待って、『帽子』……? 

 これって、以前聞いた――あの、シャーロットが、迷子になった時の?」

「そうです! 

 ウィルフレッド様が王子様のように、さっそうと木から帽子を取って、泣いていたお嬢様に、被せてくれた……

 あの、『ボーイ・ミーツ・ガール』シーンを、さり気なく再現しているんですよ!」

「なにそれ、ステキ過ぎる……!」

「で・す・よ・ね⁉ もう史上最高に、ロマンティックですよねーっ!」

 先生とユナが、がっつり意気投合してる前で


「もう、二人共……特にユナ! なんでそこまで、詳細に覚えているの?」

 照れ隠しに、ちょっとねた、領主夫人が

「あの時のウィルは、確かに王子様みたいだったし。

 今もロマンティックで、優しくてステキだけど――それだけじゃないのよ?」

 さり気なく、惚気のろけた。



「それだけじゃないって、どういう事?」

 ヴァイオレット先生の問いかけに


「その陶器のウサギは、ここヘア村の『特産品』なんです。

 村で子供が生まれると、健やかな成長を祈って、この人形を、送る風習があるんですって」

 シャーロットが、説明する。


「あぁ――生徒たちから、聞いた事あるわ!」

 うなずく先生に、

「そして、このガラスのドームは、ウルフ村が作った物」

 にっこりと、領主夫人が答えた。


「そういえば、ガラス工房があったわね?」

「そうなんです、先生! それで……どうぞ、お嬢様!」

 ユナにうながされて、シャーロットが、誇らしげに。


「これを、ヘア村とウルフ村共同の、名産品に出来ないか。

 イーサンお兄様とウィルが、計画しているんです……!」



「陶器のお人形も、ガラスケースに入ると、一段と高級感が、出るでしょう?

 上流階級のご婦人方に、絶対、需要があると思うの!」

 シャーロットが、目をきらきらさせて、語れば

「なるほど……話題になれば、プレゼント用に、紳士方の目も引くわね!」

 先生も、深く頷く。


「例えば――このお人形の服とか、小物とかの仕様も、オーダー出来るようにしたら、いかがでしょう?

 後は底に、オルゴールを付けるとか。

 中に細かい金箔を入れて、逆さに振ると、キラキラさせるのも、キレイですよね……」

 前世で見かけた、カスタムドールや、スノードームを思い出しながら、ふと提案した侍女の手を、あるじが、ぎゅっと握った。


「ユナッ! すごいわ……!」

「えっ? あのっ……ただ思いつきを、言ってみただけで」

「グッドだわ! それ全部、書き出して――いえ、いっそユナも、制作にたずさわったら?」

「それだわ……! 帰ったら早速、ウィルに、お話しします!」

 本人が、あわあわしている間に、『ユナ・マウサー、共同プロジェクトへの出向決定』のハンコが、ポンと押された。



「あっ、あの――侍女としての業務に、支障のない範囲で、お願いします……!」

「もちろんよ! それでは……」

『これだけは!』と念を押す、侍女の左手を、ギュッと握って、

「次は、ユナの番ね?」


 左手の薬指に、透かし彫りの指輪と、重ねて付けている、『アメジストの指輪』を、先生に見せながら。

 領主夫人は、歌う様に告げた。


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