それは入社初日の事だった2
ドアを開けた瞬間!
拍手喝采! クラッカーの音が鳴り響く!
壁一面には紅白幕、目の前には
”時代くん入社おめでとう!“の垂れ幕!
おめでとう!おめでとう!
おめでとう!おめでとう!
おお、まるでとあるアニメの最終回のラストシーンのようだ。
みんな笑顔で迎えてくれる!
何人いるんだ?この会社の人たちは!
拍手が続く中で、人の輪が途切れない!
俺は笑顔で迎えてくれた前の社長らしき人に向かって歩いた……。
て、妄想はやめとこう。さて、気を取り直して、ドアを開けてみる。
「おはようございます!本日から入社いたします、時代トメルです!」
と挨拶一礼……。あれ?静かだ。
聞こえてくるのはコピー機の音と電話で会話している声だけ。
あれ?拍手は?垂れ幕は?
というか、人がいない。目視しても五人くらい。
「あ、時代くんね。そこの空いてる机と椅子を使ってね。私は総務、人事、あとちょこっと法務もやる
赤月みのりでーす」
さっきの電話の人だ。俺と歳が変わらないくらいかな。
眉も唇も流行りのメイク、メトロの中吊り広告の
『◯◯OL』そのままの雰囲気。かわいいといえばかわいい。いやいや、何を考えてる俺!
赤月みのりと名乗る、女性社員は僕に会社の備品の使い方、支給される文房具などいろいろ教えてくれている。
「ねー、ちょっと聞いてる?シュレッダーは束で入れると故障するから、絶対に細かく破ってから入れてくださいねー!」
「少ない」
「え? 少ないて何が?」
「いや、社員の人たちの人数が、少ないなぁって」
「ええ、そうかなぁ」
「はい。僕から見えてあと五人くらいなのですが?皆さん外回りしているとか? それともリモートワーク? 何か用事があっていないとか」
赤月みのりは少し怪訝そうな顔をして呟いた。
「また間違えたんだな、入ってくるところ」
「え?」
「とにかく、うちの会社は今、時代くんから見えているこの人数だけよ。リモートワークとかやっていないわけではないけど、そうか、まずは備品よりも社内の人を紹介するね!」
いつの間にか、話し方が敬語からタメになってるよ!
赤月みのりは、話し方からして、この人絶対俺と同じくらいの歳か歳下だな。
しかし、この社内、狭い!俺と赤月みのりと
五人合わせて七人が働くには、やや狭い間取りだ。
果たして、この会社。ここで本当に機動力のあるロボを作るのか。
なんだか怪しくなってきた。