恋の終わりと人生の終わり
主人公パーンします。苦手な方は飛ばしてください。
付き合っているわけでもないけど、付き合ってるに等しい想い人はいた…と思っていた。相手からの甘い言葉を全部信じていた。そして、愚かな夢を見ていたんだ。
でも。それは目も当てられない姿となって散った。
「呼び出してあれなんだけど、ごめん。今はその気になれないから。でも、俺に対して好意を持ってくれたのは嬉しい。できればこの関係を暫く続けて欲しいな。」
…知らない。私は、私は…。
***
胸が痛いや。結局全て断ってきてしまった。全部全部、彼との関係を切ってしまうことになった。つい、もしかしたらって思ってしまう。勿論、ありえないのは分かってる。だからこそ、だから…。
ふと、空を見上げた。どんよりとした曇り空。まるで私の心の中を映しているようだった。そんな空に寂しげにひらひらと桜が舞っていた。
そういえば彼と一緒に満開の桜並木を通ったことがあったなぁ…なんて。
ほろりほろりと涙が溢れて。ぐっと唇を噛み締めて堪える。もしここで大泣きしたら、きっと前に進めなくなってしまう。でも。
これから私は一体どうすれば良いというのだろう。
先輩と不仲になったあげく、体調を崩して退部した。クラスメイトとは彼が男子と仲良くすると怒ってきたから馴染めていない。中学校時代の友達はみんな別の高校に行ってしまって、連絡すら取ってない。親はほぼ家にいない。
私1人しかいない。
もう少しだけ、あの甘い夢に浸っていたかった。でも。終わりがきてしまったからには引き返せない。どうせ、どこに向かおうと全部行き止まりだったのだ。高らかに私を嘲笑う声が聞こえた気がした。
…疲れた。もう。だって。彼に縛られて生きていたのに。急に縄を解かれて外に放り出されて、行く宛もなくて。
ふと浮かんだ考えは私の心の中に小さな波紋をつくった。
…いいや。たかだか失恋ごときで大袈裟な。でも、失ったモノを取り戻す方法は…ない。
ホームで電車を待つ。
暗くなってきたな…。
すっかり迷子になってしまった。
喜びも、悲しみも本当のことだったのかもはや分からなくなってしまった。
彼にアレを言われて怒ったのも一瞬だった。
彼と過ごした時間の中で楽しかったことはもはや存在すらしない。…全部嘘だったのだから。
彼の声が聞こえてきた。
「おい!さっきのはどういうことだ⁈俺は…」
戻れないで迷子なのはこの人も…か。
「お断りしたはずです。」
「ふざけんな!」
ガンッ
ぐらり…
キキーッ
ゴンッ
視界が暗転した。嫌な音と嫌な衝撃が私を襲った。
…嗚呼。私はホームの下に突き落とされたのか。
そして定刻通りにきた電車に…
薄れ行く意識の中でそっと自分に言い聞かせた。
1つだけ確かなことがある。
それは
信じていい人なんていないということ。
次生まれ変わる時は
それを忘れないで生きよう
と。
これから転生します。