向けられる、疑惑の目
「じーちゃん! ちょっと聞きたいことがあるんだけど!」
突然、ピエが話しかけてくる。
そこには、ピエ・ピグユキ・ブタノブ・エレくんの4人がいた。
「ほら……誰か聞いてよ!」
「えっ? ねーちゃん聞かないの?」
「そうだ! ピグ聞いてみてよ!」
「なんでオレ!? オレ聞けないよ……」
「ねーちゃん先陣きって話しかけたんだからねーちゃんが聞けよ!」
「うるさい! 生意気言うな」
「なんでそうなる!?」
俺の目の前で突然、ピエ・ピグユキ・ブタノブがケンカし始めた。
「お前たち! もういい歳だろう!」と言いかけようとした、その時。
「じーちゃんってサイボーグなんだよね?」
この空気を壊すかのごとく、エレくんが口を開いた。
「ああー! 聞いちゃったー!!」
そう言ったブタノブの表情が、どことなく引きつっている。
あれ? もしかして俺がサイボーグだってことが、ついにバレた!?
そのことに気づいた瞬間、血の気が引くような感覚がした。
何年も隠し通してきたのに、長年の忍耐も水の泡か……。
――とにかく、全力でごまかさなければ!!
「あ? なんだそりゃ? 鉄腕アトム? 鉄人28号?」
とりあえず、ボケたふりして話をそらす作戦だ。
4人の反応は……?
全員、無言で俺をジトッと見つめてくる。
気まずい空気だ……。
「……あ~サイボーグ! あれはマンガの世界だろ? なんでじーちゃんがサイボーグなんだ?」
こうなったら、逆に質問してやる。
するとピグユキの口から、恐れていた一言が……。
「オレたちさっき見たんだ……じーちゃんが猛スピードで走ってたところ」
しまったああああああああああああああああ!!
誰もいないことをしっかり確認したはずなのに、孫たちに見られていたなんて!!!
はたして、どうごまかせばいいんだ。
なんて言えば、孫たちは納得するだろうか。
困り果てたその時、視界の端にラジコンカーが映った。
こうなれば、一か八か!
「あれか? あれはばーちゃんが操縦するラジコンカーに乗ってたんだよ」
「えっ? ラジコンカー!?」
ピエが「信じられない!」と言わんばかりの表情で、素っ頓狂な声を上げた。
この話題は、無理やり終わらせてしまおう。
「じーちゃんがサイボーグだと思うか? そんなわけないだろ~ハッハッハ!!」
水戸黄門の如く声高らかに笑い、この場を収めた。
「……見たんだけどな……」
エレくんは納得行かない、といった表情を浮かべていたが、気にしない!
――4人が去って、動悸がおさまらない心臓を休めようと深呼吸した、その時。
「……孫たちに見られたのかい?」
俺のうしろには、あいつの姿。
機関銃の如く、怒鳴りだした。
「あれだけ見られないように気いつけれってワシ何回も言ったのに!! バレたらどうするのさ!?」
不覚にも、見られていた。
怒鳴られたことも悔しいが、なによりも自分の不注意に一番腹が立つ。
「う……うまくごまかしたからバレねえべや!!」
つい、カッとなってしまう。
――その時、誰かの視線を感じた。