薄れゆく、意識の中で
「……さん! 父さん!!」
かすかに、あいつの声が聞こえる。
俺、まだ生きてる――!?
――あれ?
俺は今、たしかに目を開けたはずなのに、何も見えない。視界が真っ暗なのはなぜだろう?
それに、すぐそばに誰かの気配を感じるのに、声がやけに遠い気がする。
手を動かしたくても、思うように動かない。
自分の意志を伝えるべく声を発してみようとしたが、息苦しくてうまくいかない。
――もしかして俺、命だけは助かったけど、一生このまま何もできなくなるのか……!?
「……意識はあるようですね」
「先生! うちの人は大丈夫なんですか!? どうか助けてもらえませんか!?」
――ああ、そうか。ここは病院なのか。
「助かる方法はあります。しかし……」
「身体の中にインプラントを埋め込む……つまり、サイボーグ化することをご承諾いただけますか?」
「えっ! そんなこと……!?」
「わかりやすく言うと、全身の損傷が激しくこのままでは今まで通りの生活を送るのは困難な状態です。しかし、損傷箇所をインプラントに置き換えれば回復の見込みはあります」
朦朧とする意識の中、俺は医者の話を聞き逃さないよう必死に耐えた。
もし、俺がサイボーグになれば、今まで通り働いて家族を養っていける。
夢だった、ハルカツに俺の後を継いでもらうことも叶うかもしれない。
しかし、俺がサイボーグ化したことによって、周りの人は俺をどういう目で見るだろう?
そのことで、家族に迷惑をかけてしまったら……?
でも、ここで夢を諦めたら、生きることを諦めたら、残された家族は路頭に迷うだろう……。
――最後の力を振り絞って、伝えないと!!
「せんせ……おれ……」
「父さん!!」
「サイ……ボ……して……く……だ……」
「大丈夫ですか!?」
「かぞく……のた……め……に……サイボ……グに……なり……たい」
「父さん! 本当にそれでいいの!?」
――何回も言わせるなよ。
俺は家族を守るために、サイボーグになりたい。
夢を叶えるために、サイボーグになりたい。
……ただ、それだけだ。