思い出す、春の日のこと
――どうして俺がサイボーグになったのか。
それは、俺がまだ若かった頃までさかのぼる。
アミーゴスとリリオさんというブログに登場する、通称ピグパパ――つまり、俺の一人息子のハルカツが、一歳になって二ヶ月ほど過ぎたある日のことだ。
春先のポカポカと暖かったあの日、俺は馬にプラウを引かせながら畑を耕していた。
俺が若かった頃は、トラクターなんてシロモノはまだ買えなかったからな。
あぜ道の向こうに、妻が小さいハルカツをおんぶしながらこちらに向かってくるのが見えた。
そろそろ昼飯時か……。
のどかな田園風景。
しかし、その後事態は急変する――。
突然、馬が唸り声を上げた。
さっきまで大人しくプラウを引いていたはずの馬が、急に暴れだした。
勢いよく走り出した馬は、誰にも止められない。
馬の真後ろにいた俺は、異変に気づいてすぐ逃げようとした。
しかし、時既に遅し……。
暴れ馬に引きずられ、どのくらい進んだんだろう?
体中あちこち打撲して、周りの景色が徐々に霞んでいく……。
痛い。全身が痛い。
息苦しくて、意識も薄れてきた。
妻とハルカツの姿が、遠のいていく……。
「父さーん!!」
ああ、あいつ、俺のこと呼んでるな……。
俺、この仕事必死にやって、もっと規模拡大して、いつかハルカツが大人になった時、後を継いでほしかったんだよな……。
――すまない。
俺、お前とハルカツを残して、ここで力尽きてしまうかもしれない――。