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Destiny ~ 負の螺旋と希望の光  作者: 栗坊
第一章 邂逅
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陰明寺家

大地で起こり得る事象は天空という鏡に映し出される……

夜空に輝く星々は暗闇にのみその存在を示す……

人間は一体そこからどれほどのことを識ることができるだろう……


ガイア大地南西部(裏鬼門(うらきもん))に位置する「預言(よげん)(とう)」。古代の先人(せんじん)達が気の遠くなるような年月をかけて造り上げたピラミッド型の石造物。

塔の最頂部(さいちょうぶ)には二十畳(にじゅうじょう)ほどの空間があり、神々を(まつ)るための祭壇(さいだん)(もう)けられ、代々、陰明寺(おんみょうじ)家が「星参(ほしまい)り」を()り行う儀式の場となっている。


この星参(ほしまい)りとは、星の位置や輝度(きど)、色合い等から、この国の行く末を占う太古の昔から陰明寺(おんみょうじ)家に受け継がれてきた儀式のことだ。

今、まさに現在の陰明寺家当主おんみょうじけとうしゅ陰明寺祈秀(おんみょうじきしゅう)星参(ほしまい)りの儀式を()り行っていた。


背丈(せたけ)ほどの錫杖(しゃくじょう)の先端に三日月型の白銀(しろがね)黒鉄(くろがね)を背中合わせに取り付けた錫杖槍(しゃくじょうそう)を両手で持ち、綺麗な円を(えが)きながらゆっくりと体を廻転(かいてん)させながら手にした錫杖槍(しゃくじょうそう)を動きに合わせて体の前や頭上で素早く回転させる。その動きは、まるで氷上(ひょうじょう)(すべ)るかのように無駄がなく美しい。

幾何学的(きかがくてき)模様(もよう)(えが)くように錫杖槍(しゃくじょうそう)で夜空の星々を一点一点なぞると、藍色(あいいろ)の空のキャンパスはこの世の事象(じしょう)の答えを(みちび)き出すための巨大な壁画(へきが)へと変化する。

祈秀(きしゅう)は、止めどなく流れるような廻転(かいてん)を更に早め、空の星々と徐々に一体感を増していく。


そんな祈秀(きしゅう)の姿を一心不乱(いっしんふらん)に見つめる者がいた。祈秀(きしゅう)の息子、秀因(しゅういん)である。眉目秀麗(びもくしゅうれい)臥竜鳳雛(がりょうほうすう)な天才肌、陰明寺秀因(しゅういん)には、天も二物を与えたと誰もが口にするほどだった。


秀因(しゅういん)の目の前でゆっくりと動きを(ゆる)めていく祈秀(きしゅう)の両肩は大きく上下し、土砂降りの雨に打たれたかのように全身は汗で(まみ)れていた。



シャラン…



祈秀(きしゅう)は儀式の終わりを告げるため錫杖槍(しゃくじょうそう)床石(ゆかいし)に打ちつけ、呼吸を落ち着かせるために両の(まぶた)を閉じた。


『父上…』


フッと短く息を吐き出し、ゆっくりと(まぶた)を持ち上げたその先に秀因(しゅういん)がいる。しかし、自分を呼んだはずの息子の視線は祈秀(きしゅう)を通り越した(はる)か後方にあり、その顔には恐れにも似た驚愕(きょうがく)の表情が浮かんでいる。


『どうした…秀因(しゅういん)


息子の表情を(いぶか)祈秀(きしゅう)だったが、恐れるように見開かれた秀因(しゅういん)の瞳に映り込むもの(・・・・・・)を見つけたとき、止まっていた歯車が動き始めたような…終焉(しゅうえん)に向かって加速し始めたような…絶望にも似た感覚が体中の細胞を粟立(あわだ)たせるように感じた。


『やはりこの時は訪れるか・・』


振り絞るように出したはずの祈秀(きしゅう)の言葉は、声となって外界(がいかい)に現れることはなかった。



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