表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園裁判所  作者: 真上真
29/48

第29話

  第29話



 その日、目覚めた僕の枕元に、一通の手紙が置かれていた。


 そしてその手紙には、イジメグループの主犯である香山を殺した後、責任を取って自殺すると書かれていた。


 僕は、すぐに警察に連絡した。すると警察から、昨夜この近くの廃工場で火事があったことを知らされた。そして、その焼け跡から複数の学生と見られる焼死体が発見されたことを。


 その後、警察で行なわれたDNA検査の結果、その遺体は香山と神姉のものであることが確認された。


 警察は、その検証結果と僕の提出した遺書から、神姉が香山を殺害した犯人であると断定。弟を自殺に追い込んだ香山を殺した後、焼身自殺を図ったと結論づけた。


 そしてマスコミは、この一連の流れをイジメにより家族を失った女子高校生による復讐劇として、連日面白おかしく取り上げた。


 美和家のドアには、神姉を非難する張紙や落書きが絶えなかった。


 その後、親戚がいなかった神姉の葬儀は久世家で行ない、その遺骨は祝兄たちと同じ美和家の墓に埋葬した。


 神姉の葬儀後、僕たちは別のアパ-トに引っ越した。どうやら親が、このまま美和家との思い出の詰まったアパ-トに住み続けることは、僕の教育上よくないと判断したらしかった。


 当初、うちの親は僕を海外に連れ出そうと考えていたようだった。ちょうど海外赴任が決まったところだったようで、渡りに船と思ったらしかった。


 だが、僕はそれをガンとして拒否し、結局僕1人だけが日本に残ることになった。

 散々ほったらかしにしておいて、このうえ親の都合で1から外国暮らしなんて冗談じゃなかったし、何よりこのまま外国に行ってしまったら、それこそ神姉たちの死を、命を、行為を、人生を、意味のなかったものにしてしまうと思ったからだ。


 むろん、僕が日本に残ったからと言って、何ができるというわけでもなかった。


 だが、それでも僕は外国に逃げ出し、すべてをなかったことにすることだけは、我慢がならなかったのだった。


 そして、1人になった僕は自問自答を繰り返した。


 何が間違っていたのか?


 どうすればよかったのか?


 悪いのは誰だったのか?


 イジメの加害者か?


 その親か?


 それとも学校か?


 教師か?


 校長か?


 教育委員会か?


 裁判官か?


 弁護士か?


 国か?


 政府か?


 政治家か?


 政治形態か?


 教育システムか?


 裁判制度か?


 じゃあ、どうすればよかったんだ?


 どうすればいい?


 僕に何ができる?


 僕は何をすればいい?


 いくら嘆いても、時間は戻らない。

 憎んでも、何も解決しない。

 殺しても、死んだ人間は生き返らない。


 だったら、せめて僕の周りだけでも、2度とあんな悲劇を起こさせない。


 それが苦悩の末、僕の出した結論だった。


 そして、そのために僕が選んだ方法は、生徒会長になることだった。


 生徒会長なら、生徒活動の全権を握れるし、その気になれば学校改革にも取り組める。

 そして清川中学校に入学した僕は、1年から生徒会に入り、庶務として役目を勤め上げた。そのほうが、生徒会長になれる確率が少しでも上がると思ったからだ。


 そして1年が過ぎ、僕は生徒会長となった。


 美和家のような悲劇を、2度と繰り返させないために。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ