第2話
第2話
バスと電車を乗り継ぐこと一時間。白羽がたどり着いたのは繁華街のバーだった。
まあ、もう白羽も20歳を超えているんだし、別になんの問題もないと言えばない。
俺は、白羽を追って店に入った。そして物陰から様子を伺うと、店内には10人以上の先客がいた。
営業中なんだから、当たり前と言えば当たり前だが、気になるのは、その客の顔触れだ。顔にピアスや入れ墨だらけの奴など、どいつもこいつも趣味の悪そうな輩ばかりなのだった。
「こんばんは。どうやら、あたしが最後のようね。今夜も楽しみましょう」
白羽が皆に呼びかけた。もしかしたら偶然居合わせただけなのかとも思ったが、やはり全員知り合いのようだ。
「あ、ああ、楽しもう」
アル中なのか、ジャンキーなのか。20代半ばのガリガリ男が、痙攣しながら相槌を打つ。他の連中も、馴れ馴れしく白羽に話しかけてくる。
なんなんだ、こいつら? マジで全員梵の友達なのか?
こいつとは小学生からの付き合いだが、こんなダチがいるなんて聞いたこともないぞ。いや、俺と疎遠になってからできた友人かもしれないし、他人の交友関係に口を挟む気はない。だが、それにしても、もう少し友達選んだほうがいいと思うぞ、白羽。
白羽がカウンターに座わると、鼻にピアスをした男がグラスを差し出してきた。
「ありがと」
白羽は笑顔でグラスを受け取ると、迷わず口をつけた。
「それにしても、変われば変わるもんだな。最初に見たときは、垢抜けない地味な娘だったのに」
鼻ピアスは、白羽の顔をマジマジと見た。
「言ったでしょ。磨けば光るって」
白羽は微笑した。
「本当にな。なあ、いいだろ、今夜こそ、その体、味見させてくれよ」
鼻ピアスは下なめずりした。
「せっかちねえ。そう、あせらないでもいいじゃない。夜はまだまだ長いんだし」
白羽は鼻ピアスにしなだれかかった。その肢体から大人の色香が漂ってくる。以前の白羽からは考えられない妖艶さだ。
「ほんと、いいわね、その体」
金髪女が、白羽の側に寄ってきた。
「ねえ、その体、私にも使わせてよ。その体なら、どんな男でも選り取りみどりだろうから」
「だめよ、これはあたしのなんだから」
「もちろん、タダでとは言わないわ。その代わり、前にあなたが欲しがってたバッグ、アレあげるから」
「あれを?」
「そう、悪い話じゃないでしょ」
「そうね。でも、今はダメよ。いくら学生とはいえ、そう短期間でコロコロ性格が変わったら、さすがに回りに怪しまれちゃうもの」
「わかったわ。でも、できるだけ早くお願いね。私たちには無限に時間があるけれど、人の若さにはタイムリミットがあるんだから」
金髪女は、白羽を物欲しげに見つめた。
「はいはい。わかったから、もう少しだけ待ってちょうだい」
なるほど。
「そういうことだったのか」
俺は物陰から踏み出した。




