表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園裁判所  作者: 真上真
15/48

第15話

第15話



 リニューアルオープンから3日。動物園の運営は、今のところ順調だ。


 かつては百獣の王を気取り、園内を我が物顔で闊歩していた獣たちも、今では檻の片隅で草を食んで暮らしている。


 もっともセコガニだけは例外で、あの日を最後に転校してしまった。


 どうやら、あのあと俺に飛び降り自殺の予行練習をさせられたことが、相当ショックだったようだ。それを見ていた母ガニも、その後ノイローゼで入院したって話だし。

 あの母ガニも、セコガニの「自分は何もしてないのに、いきなり白河がホウキで殴りかかってきた」という言葉を鵜吞みにして「そんな乱暴な子は学校から追い出してやる!」と、学校に乗り込んできたときは、元気一杯だったんだがなあ。人生、一寸先は闇とは、よく言ったものだ。


 あとリニューアルにあたって、もうひとつ大きな変化があった。飼育員の交代だ。

 新しく配属されてきたのは、日下部優樹という兄さんだ。名前からして草食系だが、見た目もその通りの優男だ。

 性格も大らかで、人当たりもいい。一昔前であれば、肉食獣たちのかっこうの餌食だったに違いないが、今の動物園にはよく馴染んでいる。

 生徒に媚びることも、えこひいきもない。ただただ、ボス猿どもの顔色をうかがうだけだった前任者とは大違いだ。


 ちなみに、その前任者はと言うと、突然園長に辞表を提出して動物園を去ってしまった。何があったか知らないが、自分に飼育員の資質がないことに、遅まきながら気づいたらしい。


 とにかく、これで白河の学校での状況は改善できた。だが、それはあくまでも現状での話でしかない。それこそ進級してクラス替えがあれば、また同じことが繰り返される可能性は十分ある。


 それでも、これから先も俺が白河の傍にいてやれれば問題はない。だが、そういうわけにもいかない以上、なんらかの対策を講じる必要があった。


 さもないと、また白羽が何をするか知れたものじゃない。


 あいつを暴走させないためにも、俺たちがいなくなっても、白河が無事中学を卒業できる環境を作り上げる必要があるのだが……。


 せめて白河の人間不信が、もう少し和らげばいいのだが、今の段階では望み薄だし。


 それに、たとえ白河自身に問題があったとしても、それが白河に危害を加えていい理由にはならない。この日本は、憲法で基本的人権が保障されている法治国家なのだ。


 しかし、そんなお題目をいくら唱えたところで、なんの意味もない。もっと実のある、具体的な方法を考えんと。うーん。どうしたもんか……。


 いっそ、前に白羽が言ってたみたいに、この学校に学裁を導入させるか?


 白羽の言う通り、確かにアレなら白河が卒業するまで、少なくとも誰にも危害を加えられることはなくなるはずだ。前に反対したのは、あくまでも白羽が言い出すことであって、学園裁判所そのものの導入じゃなかったわけだし。


 以前の俺には絵空事でしかなかったが、今の俺なら実現できるはずだ。たぶん。


 よーし、そうと決まれば善は急げだ。


 俺は、さっそく行動を開始した。


 そして2日後、すべての準備を整えた俺は、計画を実行に移したのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ