いい加減ウザいんだよ、学校問題! もう、コレで全部解決しろ!
今日、俺は人間をやめた。
きっかけは「世界救済計画」とかいうプロジェクトだが、この際それはどうでもいい。
重要なのは、その計画に参加したことで、俺がシェイドになれたことだ。
ちなみに、シェイドとは人が生身の肉体を捨てて、影化した存在だ。そのため、シェイドは食事や睡眠をとる必要もなく、殺されない限り死なないという、超お得なキャラなのだ。
そしてシェイドとなった俺は、さっそく影の世界に足を踏み入れた。
見渡す限りの暗闇は、それこそ大宇宙と見間違うほどに果てしない。この雄大な空間を、1人漂う解放感は爽快の一言だ。
いっそ、本当にこのまま宇宙に出るか? 宇宙も闇と言えば闇だから、行こうと思えば行けるはずだ。
いや、その前に海底探検するのも悪くない。宇宙に出るのは、地球を探索し尽くしてからでも遅くない。何しろ、時間は無限にあるんだ。
ともあれ、これで生まれ育った東京ともお別れだ。ま、別に郷土愛など微塵もないし、別れを惜しむような人間も……1人いないことはないが……。
やっぱり、最後に挨拶ぐらいしておくか。このところは音信不通だったが、なんだかんだで小学生からの付き合いだし。もしかしたら、俺がいなくなったら心配したり、捜したりするかもしれない。
えーと、確か、あいつの家は……。
俺は、腐れ縁の幼なじみの家へと向かった。
そして夜の住宅地のなかに、梵の表札を見つけた俺は、さっそく家に忍び込もうとした。そのとき、
「それじゃ、行ってきます」
聞き慣れた声とともに、玄関のドアが開かれた。
見ると、それはやはり白羽だった。
化粧をしてブランド品で着飾った姿は、昔の白羽からは想像できない姿だったが、その容姿は間違いなく本人のものだった。
こんな遅くに、どこに出かける気だ? いや、遅いと言ってもまだ8時だし、大学生なら不思議じゃないか。
俺は白羽を追いかけた。
別に、白羽のことが気になって尾行することにしたわけじゃない。
それじゃ、ただのストーカーだ。
俺が後をつけているのは、さっさと別れの挨拶を済ませたいからだ。
本当に、ただただ、それだけなのだ。




