第9話 ステータスと説明
女神フィリアと再会を果たした大は、自分のするべき事を再確認した。
「皆様はどの様なスキルを得られたのですか?」
教会に同行できなかったメアリーがわくわく顔で聞く。
あの後下界に戻ってきた大は辺りを見回し、その様子から天界にいた数時間はこちらの数秒らしいと判断した。
そのため大は何事もなかったかのようにみんなの元へ戻り話し合った結果、王城に戻ってからお互いのスキルのことを説明するということになっていたのだった。
「ちゃんと教えるから急かさないでメアリー。誰から発表する?」
メアリーをなだめながら、他の2人を見る。
「じゃあ、私からいくわ。ステータス!」
名前 : 葵 さくら
種族 : 人族
性別 : 女
年齢 : 25
職業 : 魔姫
スキル : 全属性魔法
魔力解放
魔力回復
エクストラスキル : 魔法合成
「さくらさんは魔法に特化した能力ですね。その綺麗な黒髪に似合ってますね。魔女っぽい。」
「え、そんなこと…//」
俺が素直に感想を述べた結果、何気なくさくらを褒める形となってしまった。
それに対してさくらは頰を赤らめ返答に困る。
それを面白くは思わない萌絵は
「さ、次は私だね、ステータス!」
と声を上げた。
名前 : 冴木 萌絵
種族 : 人族
性別 : 女
年齢 : 17
職業 : 剣姫
スキル : 剣姫
身体能力強化
集中
エクストラスキル : 闘気収縮
「萌絵は剣士寄りだな。」
「うん!大のことも守ってあげるよ!」
萌絵は細い右手で力こぶを作り答える。
「さくらさんは魔姫で萌絵さんは剣姫だなんて滅多にいない職業ですよ!すごいです!」
メアリーが興奮して言うが、この世界に来たばかりの彼女らはそのすごさがイマイチピンとこない。
「次は大行ってみよー」
萌絵の呼びかけに応えてステータスと唱えみんなと同じようにステータスを開示する。
名前 : 最上 大
種族 : 人族
性別 : 男
年齢 : 17
職業 : 勇者
スキル : 剣聖
古代魔法
エクストラスキル : 隠密
念話
隠蔽
モードチェンジ
(神格 : 愛)
「大君のスキルは剣と魔法の両方あるみたいね。」
「大だけエクストラスキル多い。ずるい。」
「大様さすです。やっぱり勇者様です。」
彼女らは三者三様大のステータスについて感想を述べる。
「うーん、しかし改めてステータスを見てみると結構効果がわからないものがあるな。」
「あ、それは私も思ってました。例えば私の魔法合成とか大君のモードチェンジとかですね。」
「うんうん!私の闘気収縮なんかもよくわかんないし。」
俺はみんなのステータスを見て、イマイチピンと来ないスキルがいくつかあった。みんなも同じように感じていたようだ。
「皆様は明日から訓練に参加していただく予定です。訓練には城の裏にある森を使うのでその際に効果を確認するのがいいと思います。」
メアリーがそんな大たちに解決策を施す。
「まぁそんなに焦る必要も無いしな。それで行こう。萌絵それでいいか?さくらさんも」
「了解!」
「ええ、問題ないわ」
「ステータスの話も落ち着いたところで、萌絵とさくらさんにはこれからのことでちょっと話がある。」
俺はフィリアのことを彼女らと相談すべく、さらにはメアリーの退出を促すよう意味を含ませる。
「それは私が聞いたらいけないことなんですか?」
メアリーは両目に涙をため、それをこぼすまいと目を細めいう。
「…」
正直俺はメアリーにフィリアのことを話しても良いのか悩み返答に困る。
そんな中大が悩むのを見て、桜が声をあげた。
「大君、メアリーさんとはまだ短い付き合いだけど、私たちに優しくしてくれるし信じていいと思うの。だからどうか彼女にも今から貴方がしようとしている話しを聞かせてあげてください。」
彼女は自分の生徒である大に頭を下げお願いした。
「さくらちゃん…」
「葵様…」
「さくらさん、頭をあげてください。わかりました。桜さんの意見を信じます。」
「ありがとう大君。」
「いえ、元々もう少しメアリーと過ごして問題ないのなら彼女にも話すつもりでしたし。」
「ありがとうございます。大様、葵様。」
メアリーは先ほどまでとは違う涙を、そして今度は我慢できずにこぼす。
メアリーが泣き止むのを待ち、頃合いを見て再び大が口を開く。
「メアリーも落ち着いたみたいだし、そろそろさっき言おうとしたことを話すよ。」
「「「うん(ええ)(はい)」」」
「実は僕たちがこの世界に来たのには理由は、勇者としてではなくてー
窓の外がすっかりと黄金色に染まってしまった頃にようやく大は説明を終えた。
大が話したのは大きく3つ
(1)フィリアの説明
(2)俺がなぜこっちの世界に呼ばれた理由
(3)殺されたダーシェと昔話
である。
「てことは私たちは大の近くにいたからこっちに連れてこられたって訳?」
萌絵が長話で凝った体を伸ばしながら言う。
「そうなってしまうな。改めてごめん、萌絵・さくらさん」
俺は自分のせいでさくらと萌絵を巻き込んでしまったと考えて、頭を下げ謝罪した。
その結果気にするなと彼女らは笑い飛ばしてくれた。
俺は感動して泣きそうになった。そして同時になんとしてもこの2人だけは無事に元の世界に戻すことを誓った。