第7話 1日目の終わりと、再開
大が玉座に座る王を偽物だと証明して見せた後
「勇者殿!よくぞ見破った。余こそが本物の王であるシャーロット・ジンである。」
ジンは立ち上がり右手を出す。
「よろしくお願いします。」
大もそれに応えて右手を出す。
こうしてようやく王と勇者との握手が交わされたのであった。
その後の謁見は何事もなく終わった。
まずジンは入れ替わっていたことを改めて大に謝罪した。ダラスは国民から選ばれた言わば王の影武者であり王と瓜二つである。はじめて王と会う場合は警戒を高めてあのように対応する決まりらしい。
次に横で口を噤んでいた萌絵と、さくらにも同様に謝罪と挨拶をした。
最後に本題であるこの世界に召喚した理由である、魔王関係の会話をして謁見は無事に終了した。
「あー食った食った」
今大は謁見後の会食を終えて用意された自室のベッドに寝転んでいる。
そして目を閉じて本日の出来事を整理する。
まず思い出したのはやはりフィリアの依頼のことだ。依頼の内容は分かったが、その後が手詰まり状態である。
このことは悩んでも今すぐに解決できそうにないので、大は再び目を閉じる。
次に思い出したのは、メアリーのことである。はじめメアリーは俺を懐柔するようにと命令を受けていたようだが、大はあの王がそのような指示を出すようには思えなかった。
(黒幕がいるな…)
と言う推論に至ったところで、大は考えるのをやめ今度は眠るために目を閉じた。
翌日、勇者一行は神の祝福を受けるためにこの国1番の規模を誇る協会に馬車で向かっている。
こちらの世界の人々は成人した後に教会にてスキルを1、2個授かるとのことである。
「あのー、私たちはもうスキルを持っているんですが、教会にて行く必要ってあるんですか?」
萌絵が、目の前に座る兵士に尋ねる。顔から判断するに17、8の青年であろう。
「あります。あなた達が持っているスキルはエクストラスキルというもので、かつての勇者も持っていたとされています。なので教会で授かるスキルとは別物となります。」
「そうなんですか。ありがとうございます。」
萌絵が笑顔で兵士にお礼を言う。それを見て兵士は顔を赤くする。美的意識は地球とあまり変わらないようである。
「さくらさん、大丈夫ですか?」
萌絵と兵士のやり取りを聞きながら大は横で眠そうにしているさくらの体調を気遣う。
「ええ、大丈夫。」
さくらは、問題ないと言う。
「さくらさん、あなたはいつも頑張りすぎなんです。メアリーから聞きましたよ。昨日遅くまでこの世界のことを知ろうと本を読んでいたことを。ありがとうございます。でも少しは俺を頼ってください」
大はそう言いながら無意識に黒髪を撫でる。
「っ!!」
彼女はその名前のように頰を染める。
そして大は無意識にさくらの頭を撫でていたことに気づき、
「すいません勝手なことして。」
と言いながら手を引っ込めた。
するとさくらは少し残念そうな顔をした後に
「いいえ、ありがとう大君」
と言いながら笑みをこぼした。
「皆さま、着きました。」
先程萌絵と話していた兵士がそう告げる。
大達はそれを聞き馬車を降り、教会に足を踏み入れた。
教会は地球にあるハットルグリムス教会のような作りであった。
「綺麗…」
「美しい…」
彼女らは窓から入る光が作り出す神々しい雰囲気に見惚れ、ぼそっと声を漏らす。
しばらく入り口でその光景を堪能した大達はいよいよ神の祝福を受けることとなった。
「この世を創造せし、12の神々よ我にその祝福をー」
このような決まり文句をさくらが祭壇に向かい唱える。これは馬車にて兵士に説明をされ、祝福を受ける際にはこの言葉を言うのが一般的らしい。
さくらが決まり文句を唱えた後、彼女が一瞬眩く光る。これで彼女は神からなんらかのスキルを貰ったということになる。
「よーし次は私の番ね。この世を創造せし、12の神々よ我にその祝福をー」
萌絵もさくらに習い定型文を唱え、その後眩く光る。
最後は大の番である。
「この世を創造せし、13の神々よ我にその祝福をー」
大がそう唱えると、萌絵とさくらの時とは比べものにならないくらい、彼の体が光を帯びる。大も目の前が真っ白になる。
そして大が目を開けると、そこには
「やあ大君、やっと来たね!僕は待ちわびたよ。」
金髪の絶世の美女、いや女神であるフィリアが佇んでいた。