第6話 謎解きは謁見の前に
勇者一行が謁見の間に入るとメアリーとは別れ代わりに鎧をまとった兵士2人に挟まれる形となった。
大は玉座の前に着くまでの間周りを観察する。これは普段の癖だろう。
観察の結果大はいくつかの事がわかった。
例えば大の左に並んで歩く兵士は一見普通に見えるが、若干右足を引きずるように歩いている。恐らく右足の調子が悪いのだろう。
一歩二歩と玉座に近づく。
自分たちが歩く道を挟んで役15人いる。おそらく人数的に各部署のトップの人材だろう。あの人は首相で、あの人は執事長などとその人物の特徴から大は推測する。
また一歩二歩と近づく
玉座には恐らく王であろう人物が堂々と座っており、彼の側近の男がそばに控えることに王の後ろには2人の少女と、1人の青年が立っている。おそらくメアリーがいる事から、姫と王子であろう。彼らの後ろには右手に杖を持った王様の大きな肖像画が飾ってある。
また一歩二歩と近づく
大きい音を立てて歩く兵士の足音が止まる。どうやら玉座の前に着いたようだ。
兵士は大たちの列から一歩下がって控える。
「勇者殿よくぞ参られた。余の名はシャーロット・ジンである。」
茶色の髪、茶色のヒゲを生やした王がそう言いながらその場で立ち上がり右手を出す。
大は握手に応えるべく王に近づき
「歓迎感謝します。王様。」
大もそれに答え笑顔で左手を出す。
「…」
場の空気が凍る。
しかし大はニコニコしまま動かない。
「おい!貴様王に向かって貴様失礼だぞ」
王の側近が顔をトマトのように赤くして怒鳴りつける。
「でもその人王様じゃありませんよね?」
大はあろう事か目の前の茶髪の男を指差し偽物だと述べる。
「「「ごくっ」」」
この場にいる多くの人が生唾を飲む音が聞こえる。
「なぜそう思う。」
王を名乗る男が真剣な眼差しで大に問う。
「あなたの後ろにある肖像画を見ると王様は右手で杖を持たれてますよね?通常杖を持つのは悪い足の逆側の手です。なのでここまでだと王様は左足が悪いということになります。しかし利き腕の方が杖を持ちやすいという理由で左右どちらの足が悪いかに関わらず、利き腕で持つケースもあります。王様は前者に当たります。」
その場にいる全員がじっと大を見つめている。
「その理由はその肖像画にある王様のサインです。人間は右利きの人間が圧倒的に多く、文字は右利きの人が書きやすくなっています。なので左利きの人が文字を書くと通常は見られない不自然なはね、はらいが見られることがあります。それが王様のサインにも見られます。そのため王様は左利きであるという事になります。」
大はそのまま続ける。
「肖像画の王様は右手で杖を持っているので、利き手の逆の手で杖を持っています。従って王様は左足が悪いと証明されます。」
大は止まらない。
「しかしあなたは先程両足を使って立ち上がりましたよね?足が悪い人間はその酷さによらず悪い方の足をかばってしまうものです。しかしあなたはそのそぶりを見せなかった。」
「そんなのはたまたまだ!偶然にすぎん」
大の推理を聞き目の前の王を名乗る男は汗をダラダラかきながら苦し紛れの反論をした。
「そこまで言うのなら、決定的な証拠を出しましょう。」
大はそう宣言し、自分の左後ろに控える兵士を指差した。
「そ、其奴がどうしたと言うのじゃ。」
王を名乗る男はさらに焦りながら言う。
「彼は先程僅かに右足を引きずって歩いていました。僕の予想が正しければこの兵士こそがこの国の王様シャーロット・ジン様です。」
「何を出鱈目を言う。其奴は訓練で足を痛めているだけだ。」
王を名乗る男はどうしても認めないつもりである。
そんな中
「もう良いダラスよ!」
大の左後ろに控える兵士が面頬を取りながら答えたのであった。