第4話 勇者召喚と新たなラブコメの波動
ある日の昼下がり、アルガントの北部に位置するマリーツィア王国の王城の堅く閉ざされた一室で勇者召喚が行われようとしていた。
絶世の女神を模った像を前に祈りを捧げる赤髪の少女がいる。
「愛を司る女神フィリアよ我が願いを聞きたまえー」
彼女は両膝をつきながら手を胸の前で結び目を閉じて祈る。
この勇者召喚は王家の人間のみが行えるとされる。しかしそのほとんどが王女によって行われる。その理由は勇者は男が多く、召喚されたものに差し出す生贄的な意味を持っているからである。そのため彼女の表情には影があるように見える。
少女が祈りを捧げることを数分、床に魔法陣が浮かび上がる。
「っ!!」
少女は、目を見開く。その行為が驚きから現れたものか、これから起こるであろう事への不安からかは少女本人にしかわからない。
やがて魔法陣が完成し、部屋中がまばゆい光で満たされる。
しばらく経つと光が収まり、そこで少女が目にしたものは、黒髪のすらりとした少年であった。
「カッコいい…」
少女は思わずそう呟いた。
今まで触れてこなかったが大の容姿は優れ、地球にいた頃もよく異性に声をかけられていた。
「えっと、君は?」
俺は頰を赤らめぼーっとこちらを見つめる少女に尋ねた。
「…ひゃい!、私はマリーツィア王国第一王女シャーロット・メアリーです。」
さすが王女といったところか、メアリーは突然大に声をかけられ、少し声が上ずりはしたもののきちんと挨拶をした。
「メアリーさん?でいいのかな。俺は最上 大。それと今どういう状況か教えてもらってもいい?」
俺はフィリアに聞いていたためここが王城であることは知っていたが、やはり探偵の端くれ出来るだけ情報は自分で得たいのだ。
「はい。まずここは貴方のいた世界とは別の世界です。 誠に勝手ながら私たちのお願いを聞いてもらうためにお呼びいたしました。」
メアリーの表情は暗く、こう続ける。
「そのお詫びと申しましてはなんですが、どうぞ私をお使いください。」
メアリーはそういうと、自身が身につけている衣服を脱ぎ出した。
「っ!やめてくれ。」
俺は慌てて止める。
「でも!!」
メアリーが声を荒げて言う。
「メアリー分かってるよ。俺を懐柔するために命令されたんでしょ?俺は大丈夫だから。それに好きな人以外に肌を晒すもんじゃない。」
ゆっくりと落ち着いた声で、諭すように俺はなだめた。
するとみるみるうちにメアリーの目に涙が溜まり泣き出してしまった。
そしてメアリーは大の胸に顔を埋め、しばらく泣き続けた。
大は流石にメアリーを引き離す気にはなれず、片手で彼女の背中を撫でてもう片方の手でその赤い髪を撫でた。
「大何してるのかなー」
「最上くん、不純異性交遊は退学ですよ。」
大は突然背後から声をかけられ、振り向くとそこには今まで見たことのないような笑顔の二人が腕を組んで立っていた。