第3話 プロローグ3
時は遡ること少し前
「うーん」
制服を着た女が目を覚ます。
「冴木さん起きたのね」
「さくらちゃん!ここは?大は?」
萌絵はまくしたてるようにさくらに質問をする。
「冴木さん落ち着いて、ここの場所は分からないわ。起きたらもうここにいて。あと最上くんはここにはいないわ。」
さくらは萌絵を出来るだけ落ち着かせようとゆっくりと答える。
「それにしても見事に真っ白な部屋だね〜。私達どうなるんだろう。」
萌絵は落ち着きを取り戻したようだがやはり不安を拭えない様子だ。
「とりあえず今覚えていることを確認し合いましょう」
さくらと萌絵は記憶と周囲の情報を頼りに状況を把握しようと試みた。
その結果は乏しいものとなりわかったことは、自分たちが真っ白な部屋に閉じ込められ、目の前に13の席があることだけである。
その後、彼女たちは気を紛らわすために雑談をする。その話題はやはり大のこととなるのであった。
「それで大がねー」
「冴木さんは本当に最上くんのこと好きですね」
さくらはいたずら顔で萌絵に言う。
「なっ、うん好きだよ」
萌絵は頰を赤らめながら言う。
「そういうさくらちゃんも大のこと好きでしょ?普段めっちゃ大のこと見てるし」
萌絵はさくらにカウンター攻撃を仕掛けた。
「えっ、最上くんは生徒です。そんなことあふはずがありません。」
さくらは否定するが、早口で更にかみかみなため本心ではなさそうだ。
それを聞いて萌絵はニヤニヤしさくらをからかい出す。
数分後、彼女たちは大の話をしてだいぶん落ち着いた様子である。そんな時彼女たちの目の前の椅子にいきなり現れ、こう話しかけてきた。
「ようこそ、僕は愛を司る女神フィリアー」
このセリフはほとんど決まり文句のようだ。
時間軸は再び戻って、大がフィリアの意図に気づいた後に戻る。
あの後、大は改めてフィリアにスキルを選択し終えたことを報告した。もちろん隠蔽を施したものを。他の神々もスキル発動に気づく様子は見られなかった。
スキル選択も終わり大はまだ分からないことをいくつかフィリアに質問していった。その結果、魔王を倒した後は元の世界に戻ることができることや、自分たちがいわゆる勇者召喚という形で王城に行くことが明らかとなった。
そんなこんなで大は出来るだけ情報を得ていった。
そして数時間後
「それではいよいよ出発の時だよー」
フィリアはわざとらしく目元を袖でこすりながらいう。
「分かりました。色々ありがとうございました。」
俺は機械的にお礼を言った。それはフィリアとの関係を他の神々に気づかせてはならないからである。
「じゃあ、貴方を転移させます。あっちょっと待ってゴミが付いてるよ。」
そう言いながらフィリアは大の元に近づく。そして胸元あたりを触り
「よし!取れたよ。じゃあ改めまして貴方を転移させます。神の加護があらんことを!」
フィリアが決まり文句みたいなものを唱えると大の体が透けて、意識が遠のく。
大が遠のく意識の中少しでも状況を確認しようと周りを見渡すと、この世のものとは思えない美貌を持った金髪の女が可愛く目配せをしたのであった。