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プロローグ



「ーーー·····カハッ…!」



口から大量の血を吐き出す。


身体中には真新しい切り傷があり、中には銃弾の跡も見られる。


下がり続ける体温。


霞む視界。


止まらない血液。



助からないのは確実。





ーーそして、俺が予想していた通りの結果。




親から受ける暴力の数々に耐えること7年。


保険金目的で殺させそうになっていたところを組織に拾われた。


人を殺すための組織。ーー暗殺組織


そこで育ち、俺は暗殺者になった。


血で血を洗う毎日。

上からの命令は絶対であり、命令に背く行為をすれば、組織全体から命を狙われる。

いつ殺されるかわからない。

寝ている時でさえも寝首を掻かれぬよう注意しながら、睡眠時間は最小限に。


そんな毎日を送りながらも、拾われた時からなんとなく予想していた。


いつか自分は組織に裏切られ殺されるな。ーーと。


俺は昔から感が良く、外れたことは無い。


そしてその予想は見事に当たった。


特に組織に対して復讐心など微塵もない。

元々7歳で死ぬはずだった命が、約8年ほど伸びただけで、ちょっと遅くなっただけに過ぎないのだ。



結局、俺の人生には幸福など欠片もなかったが、こんな悲惨な人生でも割と満足感がある。

悲惨な分、かなり濃い人生だったし…。


きっと元からこういった生活に適性があったのだろう。

育った環境が環境だけに、元々人を信じる、上手くいく。そんな甘ったれた考えを持つことが出来なかったから…。


もう手足の感覚も、聴覚も、視覚もほとんど無いに等しい。


遂には意識も遠ざかり始めた。


自分の歩んできた道に不満も後悔もないが、何かあるとすれば、せめて、もうちょっとだけ長生きというのをしてみたかった…。


まぁ、そんなものは、最初から無理だと分かっていた··········が、ーーーな。







ーーーここで俺の意識は暗闇に飲まれた。






















◇◆◇◆◇◆



『·····き··ろ。』


「ーーー·····んぅ…。」


『お···ろ。ーーーいい加減起きんか!』


「ーーーーーーッ!?」



突然強烈な殺気を浴びてはね起きる。

頬には冷や汗が流れる。


今までで一番強い殺気。


戦闘態勢に入る。



ーーだが、すぐに俺の意識は別のもので支配された。


「ーーー·····は?」


俺が目を覚ましたのは真っ白な空間。


病院とか、そういう意味合いではなく、本当に真っ白な何も無い空間だ。


目の前には杖をついた威厳のあるじいさんがたっている。

見た目は優しそうな感じどけと、気配がヤバイ。

まさに、絶対的強者が放つソレだ。


本能的に、じりじりと少しだけ後ろに下がる。


てか、もうこれ人の域を超えてる。まさに化物って感じ。



『·····はぁ、やっと起きよったか…。』



目の前の老人はこめかみを押さえ、何やら呆れた様子だ。

てか、起きたってことは、俺があきれられてんのか?·····何故に。



『それはお主がまる三日目を覚まさぬからじゃ。

普通数時間そこらで起きるはずじゃというのに·····少々焦ったぞ…。』



そんなん知らんよ。


ーーーてか、



「何サラッと人の心読んでんだよ。」


『別にいいじゃろ。減るもんじゃあるまいし。』


「プライバシーの侵害だ。」


『ワシは神だからそんなもの関係ない。』


「・・・・。」


『·····おい。何じゃその可哀想な人を見る様な目は。

止めんか。ワシは断じて痛い奴ではないぞ。』


「そうか………ならそういうことにしておこう。」


『·····むぅ。なんか納得いかんな…。

まぁ、今はそんなことはどうでもいいのだ。』


「·····はぁ、じゃあまず、ここどこだよ。」


『ぬ。ここは神界と言って神の住まう世界だ。

そして、ここにお主を呼んだのはちょっとした提案があるからじゃ。』


「提案?」


俺は少し身体を強ばらせた。

戦闘態勢は解かない。

抵抗など無駄だと本能ではわかっているが、信用ができない以上、警戒しなければならない。


そんなこと気に求めることなく老人は話を続ける。



『そう、提案じゃ。

今のお主は魂だけの状態で実態がない。

普通なら、このまま輪廻の輪に送られ転生することになるんじゃが、それをワシが無理やり止めてこちらに引きずり込んだのじゃ。』


「無理やりって、そんなことして大丈夫なのかよ…。」


『別に問題ない。これでもワシは高位の神だからな。

話を続けるぞ。

お主は天使という存在をどう認識しておる?』


「は?天使?なんで急に天使が出てくるんだ?」


『良いから。答えてみよ。』


「んーー。天使か…。こう、頭の上に輪っかがあって、羽が生えてて、神の補佐役みたいなイメージだな。」


『まぁ、大体あっておるな。』


「あぁ、そう。んで、天使が俺に一体なんの関係が?」


『うむ。それは今から話す。

確かに、天使とは神の補佐、部下みたいなものだ。

基本的には心優しく、清く正しいものが多い。

じゃが、たまに歪んだ性格の天使が生まれる。

ちょいと、テキトーになったり、荒くなる程度ならよい。それもまた個性じゃからな。

しかしな、それだけでは終わらんやつも出てくる。

犯罪、禁句をいくつも犯し、処分せねばならん天使もまたおる。

そういった、悪事を働きすぎた天使を堕天使と呼び、堕天使となった天使は、羽が黒く染まり、頭の輪っかは割れてなくなり、ありとあらゆる能力が爆発的に上がり、強くなる。』


「へぇ、そんなシステムがあんのか。なかなか面白いな。」


『うむ。そこでな、最近、過去最悪最大の禁句を犯し、とてつもない力を手に入れた天使が捕まったのだ。

そこでな、困ったことになったのじゃ。

堕天使を処分する場合、まず、身体から魂を抜き取り浄化し、消滅させる。

それから邪に染まった羽を主に浄化し、身体も消滅させる。といった手順になるんじゃが、

困ったことに今回捕まった堕天使がな、魂の浄化と消滅までは上手くいったんじゃが、どうも羽の浄化ができんのだ。』


「浄化せずに消滅させられないのか?」


『それをやってしまえば世界が揺らぐ。故にできん。』


「じゃあ、どうすんだよ?」


『うむ。そこで、お主だ。』


「·····俺?」



本能が全力で嫌な予感を知らせてくる。

だが、どう考えても気づくのが遅い。



『そうじゃ。

身体が消滅させられぬのなら仕方が無い。

かと言ってこのまま神界に置くことも出来ん。

そこで、だ。

消滅させられぬのなら、使ってしまえば良いのだ。

魂のなくなった身体に、新たに魂を入れ、ワシの管理する世界で生きてもらおう。というものだ。

だが、身体に入れる魂にもまた条件がある。

それは、犯罪を犯した魂しか入れられんのだ。』


「そりゃ、厳しい条件だな…。ーーーーーて、お、おい、まさかとは思うが…。」


『そうじゃ。お主に入ってもらいたいのだ。

犯罪を犯した魂の中で最もまともな人格をしておるのがお主なのじゃ。』


「まともな人格って、俺は結構ひねくれてると思うが…。」


『別に、無差別殺人鬼でも快楽殺人鬼でもないじゃろ?

お主は、自分の意思で人を殺す場合、悪人か、正当防衛の場合のみのはずだ。』


「否定は、しないが…。ほんとに俺でいいのか?

てか、下界で暮らすって言っても羽はどうすんだ…?」


『羽はな、自分の意思で出し入れが可能じゃ。

慣れんうちは寝ている間に出てきてしまうこともあるやもしれんが、すぐ慣れるじゃろ。

あと、わしの管理する世界はお主にとって生きやすいと思うぞ?』


「·····俺にとって、生きやすい…?」


『そうじゃ。ワシの管理する世界は、剣と魔法の世界。文明レベルは中世ほどであまり進んでおらん。

それに、魔物と言われる生き物がおってな、自分の命は自己責任。みたいな世界じゃ。』


「そ、れは、確かに、生きやすい、な。」


『そうじゃろ。どうだ?引き受けてはくれんか?

今なら好きな能力一つだけ持って言って良いぞ。』


「·····分かった。引き受ける。

あと、能力は物でもいいのか?」


『あぁ、構わんよ。』


「じゃあ、刀が欲しい。」


『刀か?そんなものでいいのか?』


「あぁ、頼む。出来れば、黒いのがいいな。ツヤ抜きしたやつ。」


『分かった。ただの刀じゃあれじゃろ。色々と便利な能力を付与しておこう。』


「助かる。」


『それでは、今からお主の器になる堕天使の身体をここに呼び出すぞ。』

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