その一球は誰の為に
どうも!オムレツです!
今回は優斗のお話です。
では、どうぞ!
周囲の明かりはすっかり息を潜め、静まりきった夜の校舎。
そこは昼とは対照的で閑散となっており、不気味な雰囲気すら漂っていた。
そんな中、未だに光を放っている場所が二カ所あった。
一つは職員室。もう一つは・・・
side優斗
静まりかえった体育館の中一人。
優斗は真剣な眼差しをバスケットゴールに向けて、ボールを放った。
「っふ、、はぁ、、、、もう一本」
優斗が放ったボールは惜しくもバスケットゴールをぐるりと回り弾かれた。
それを見て、僅かばかり顔をしかめる。
その後、何度もフォームを確かめて、様々な距離からシュートを放つ。
練習時間の長さは滴り落ちる汗が物語っていた。
「っっ、、よし。後10本で終わりにしようかな」
そう言いながら携帯の時間を確認すると、レインの着信マークがついていた。
恵美からだ。
優斗はそれを見て思わず顔を綻ばせた。
『練習頑張って☆ご飯作って待ってるね!』
ただそれだけの文がこの上なく優斗の気分をあげ、やる気に満ちあふれさせた。
いつも熱心に練習に取り組み、真剣に打ち込んでいるバスケだか、優斗がバスケを始めた理由は、実はとても単純なものだった。
プロの試合に憧れたわけでも才能に満ちあふれていたからと言うわけでもない。
もちろん、才能無くして一年生からベンチ入りできるほど甘い世界ではない。
だが、『才能』のたった一言だけでは片づけられないほどの努力を積み重ねてきた。
それは、まだ僕が小さかった頃。
家族でニャウンド1に行った時のことだ。
父さんに教わりながらダムダムと慣れない手つきでドリブルをする僕。小さい体に大きいボールはあまりに不釣り合いで、ボールで遊ぶというと言うよりは、ボールに遊ばれているといった印象だ。
そんな僕が必死にボールを両手に持ち、ゴールに向かって放った。
ボールは頼りなさげに放物線を描きながらもネットをくぐった。落ちてきたボールのバウンド音がやけに頭に響いた。
呆然とした意識は姉の歓声によって引き戻された。
「ゆうちゃんすごーい!!カッコいいね!ゆうちゃんはお姉ちゃんと違って運動も出来るんだね!すごいよ!すごいすごい!」
まぐれ中のまぐれで入った1本を心からすごいすごい誉めてくれる姉の声。
「えへへ〜!そうかな?じゃあ、ぼくバスケットボールやる!!」
実のところ、始めた理由と言えばこれだけなのだ。
本当にこれだけ。
自分でも思う。僕単純すぎ。
それから少しずつ本格的に打ち込むようになり、バスケも好きになっていった。
優斗は今のこの環境が好きだった。
自分のやりたいことが出来て、それを心から応援してくれる人たちがいる。本当に恵まれていると思う。
めぐ姉は試合になればいつも応援に来てくれる。
凛と母さんと父さんも予定を空けて来てくれるが、それでもめぐ姉はほとんど欠かさず来てくれるのだ。
唯一来れなかったのは予選が平日にあった一回のみだ。
まぁ、その日も学校を休んで来ようとしたけど、説得すると泣く泣く納得してくれた。
いつも試合を見に来てくれる恵美にかっこ悪いところ見せたくない。
そんな気持ちがいつも優斗の背中を押していた。
練習がきつくて吐きそうなときや、止めたくなるときは試合で無様なところを晒さない為と歯を食いしばってきた。
すごくちっぽけでガキ臭い理由だが、それこそが満足にバスケに打ち込める環境をくれている家族へ、そしてめぐ姉への恩返しだと思っている。
「これで、、最後っと、、」
そんな不純で純粋な気持ちを乗せたボールはリングに触れることなく、綺麗に吸い込まれていった。
読んで頂きありがとうございます!
私は偶にこういう話挟むの好きなんですけど、皆さん的にはどうなんでしょう?
意見あれば是非お願いします。
では、また次話でお会いしましょう!




