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#3 「理想と現実」
勇樹は難関大学志望だった。そして今もそうだ。一方高校時代の周りは自分の実力と現実から判断して中堅大学にシフトチェンジし、無事進学して行った。そうしてクラスで唯一の浪人生となった勇樹は親の隠れた涙を知ったり、友達との旅行も行けなかったりと3月にして自分が周りと違う存在であることを自覚することになった。
しかし同時にそれは自分にはまだチャンスがあるということでもあった。周りが中堅大学で、「妥協」したのに対し、自分は「妥協」しなかったのだ。それは言い方を変えれば、ただのこだわりや頑固者扱いされてしまうかもしれないが、自己を貫いた証でもあったのだ。何かと人に流されることがしばしばあった勇樹にとって、このことは大きな変化であった。