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#11 「人と話すということ」
勇樹は人と全く話さないわけではなかった。確かに自分の声を忘れるほど話さない日もあるのだが、たまに講師とは勉強関連のことで話していた。特に古文の先生がいい人だったので勇樹はその人と話す時間が楽しみだった。しかし他の生徒のこともあるので毎回は話せなかった。それにその講師の授業は一週間に1回しかないので、尚更だった。一方で話していても面白くないし人柄も好きではない、むしろ嫌いな日本史の先生がいた。自分にとても自信を持っており、生徒のことを考えた授業というよりは自分の授業にいかに生徒が付いてくるかといった授業だった。そのため授業はとても早く、ついていけない生徒が多かった。なので、生徒は友達と協力して授業で聞き漏らした所などお互いフォローしていた。しかし勇樹は友達がいないのでそれができなかった。そのために仕方なくその先生のところに行って話していた。人格的に全く尊敬できないような人で、話していても楽しくないにもかかわらず、基本的に誰とも関わることのない勇樹にとってはその先生であっても話していて嬉しかった。いや人と話ができるという行為そのものが嬉しかったのだ。




