143/154
prologue 空虚な器
かつて少女は自らに問うた。
自分は、はたして何者なのか? と。
人なのか、悪魔なのか。
普通なのか、異常なのか。
一人で考えに考え抜いて、それでもなお、その欠片も掴めなかった答えは、とある二人によって手渡された。少女に課せられていた呪縛を解き放ち、あるいは重荷を背負うことを手伝ってくれた。それは少女にとって、長い長い絶望の渦から抜け出る兆しであり、新たな道を歩む導だった。
また、少女には友人ができた。少女を肯定し受け入れてくれる存在は、長らく他者との交流を断ってきた少女の心に変化をもたらした。世界がほんの少し色付いて見えた。
――そして今。少女は新たに問う。
自分は、何のために在るのか? と。
存在を認められた――あるいは認めることができた少女は、斯くして存在意義を求める。
答えを与えてくれる者はいない。自らそんな環境に身を置いた少女は一人悩む。
少女にとって、そして少女と共に在った神において、極致へ至る扉が開こうとしていた。




