表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
最終章
95/97

95.あの街一番に

 俺はフラフラと歩き回りながら、森の中を探し回った。


「…サラ」

 いくら流れても、俺の目から水は止まらない。

「………サラ」

 これ以上、何があるんだ。

「……………サラ!」

 これ以上、俺の大切な物は…あるのかよ。


「うっ…」

 俺は木の根に引っかかって、すっ転んでしまった。腕の傷が、転んだ衝撃でえぐれてしまう。


 その痛みで、自分が残念ながら(、、、、、)生きていることに気がついた。

 …死にたい。サラを守りきれなかった俺に、何の価値があるのだろうか?


「アンドリューさん…」

 俺に手を差し伸べた彼女は、俺の愛した人間じゃない。

「…じゃま」

 ロザリーの手を払いのけ、怪我をしなかった方の腕を使って、立ち上がる。どくどくと波打つような血の動きに、また悲しくなってくる。

「…サラ」

 俺はまた歩き出す。


「アンドリュー。もうやめろ」

「…」

「アンドリュー」

「…」

「アンドリュー!」

 クレイグの怒りの声で、俺はやっと動きを止める。


「お前、大丈夫か?」

 俺は震えながら、首を垂れた。大丈夫な訳…ねーだろ。

 クレイグが貧乏ゆすりをして、俺に怒鳴った。


「現実を見ろよ!サラは死んだんだ!!」

「…んなわけねーだろ」

「全部受け入れろよ!」

「受け入れられるかよ!?」

 思わず俺はクレイグの胸ぐらをつかんだ。俺の腕には全然力が入らず、彼に恐怖の何にも与えることができない。

 俺…どんな顔をしているんだろう?捨て犬みたいな顔で、ガキみたいな顔で…ぐしゃぐしゃなんだろうな。


「アンドリュー。帰れ」

「…え?」

「今すぐ帰って、治療してもらえ。死ぬぞ」

「…死んでもいいよ」

「よくねーよ!」

 クレイグが拳を振り上げたかと思ったら、震えながら静かに手を下ろした。彼は左を向いて顔を隠しながら、歯ぎしりをしだした。怒りが…奴から止まらない。


「帰れ。今すぐ」

 俺は頭をふらりと揺らしながら、森から出て行った。

 人間というのは、頭が真っ白になったとしても、目的ができたら一応行動する生き物らしい。

 俺に、『死に場所探し』という目的ができた。


 俺にはもう何もない。

 生きる意味も、価値もない。



 サラはどこへ行ったんだろう?

 城?みんなで暮らした部屋?

 …いや。違う。見当は、簡単についていた。

 あの街一番に、太陽が挨拶する場所。



 丘に登ると、なぜか心臓がドキドキしていた。

 違っていたらいい。俺の予想が…外れていたらいい。

 そう思って登って来たのに…

 アリスのような水色のドレスと、真っ黒なタキシードが、脱ぎ捨てられたように雑に置いてあった。

 俺はそっとドレスを触った。灰色の粉が、ほんの少し俺の膝にかかった。


「…終わったんだね」

 彼女のドレスを、ぎゅっと抱きしめた。

 …こんな風に、もっと抱きしめたらよかった。もっと、彼女と一緒にいるべきだった。

 あの時、止めるべきだった。


 走馬灯のようによみがえる彼女との思い出。笑った日も、泣いた日も、怒った日も、全部全部美しい色で染まっていた。

 彼女のおかげだ。こんなに幸せな…日々を過ごせたのは。


 俺はドレスを置くと、剣を取り出した。

 大きな剣は、人を斬るのには向いているが、自殺には向いていない。

 俺はゆっくりと首筋まで剣を持っていく。冷たい…俺は、結局一人なんだ。一人で死ぬんだ…


 その時、俺は悲しいことに気がついてしまった。

 俺の大切な人は…みんな不幸になるんだ。

 父さんも、母さんも、シャーロットも…サラも。

 いつもいつも、俺の後ろには死神がいて、一度でも大切に思った人は死んじゃうのかな?


「…へへ。じゃあ、死んじまった方がいいじゃん」

 俺が息を吸って覚悟を決めた瞬間だった。

 風が吹いた。


『やめて。アンドリュー』


 懐かしいあの声。探し求めていた…あの声。

「サラ!」

 後ろを振り向いた瞬間、俺の手から剣が滑り落ちる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ