表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
最終章
93/97

93.例えば

 木が揺れた。

 そのことに気がついた瞬間、私は知らぬ間に隠れていた木から飛び出した。

 ハッとした ロザリーが、私の腕を掴む。


「サラ様!」

「離して、ロザリー!」

 振り払った彼女の腕は、木にぶつかってしまい、うっすら血を流す。

 その血を見て、私の心臓はドクッ…と音を鳴らした。その音は、ロザリーを傷つけたという罪の意識からではなく、その血を吸ってしまいたいと思ったことから鳴った音…


 その時、私は思わず笑ってしまった。

 なんなのよ…結局さ。私は、結局バンパイアなんだ。

 みんなに、『サラは、バンパイアじゃない』と言われて、安心した。でも、それは違うの。それは、自分自信を納得させるための、へりくつ(、、、、)。事実じゃないの…


『本当は、自分で自分の罪にケリをつけたかったんでしょ!?』


 自分の声が、私の耳で反響する。自分の言葉は、自分に返ってくるとよく言われるが、ここまで模範解答な実例があるのだろうか?

 私は一歩踏み出した。足音が立ち、みんなの注目が私に集まる。

 風が吹いた。冷たい風が私の頰を撫で、緊張が一気に高まっていく。

「サタン。やめて」

 悪魔の顔が、私の方を向いて嬉しそうな表情をした。


「サラ。そんなこと言っても、もう手遅れだよ。俺に対してひどいこと言ったのに、やり直せれるとでも思ったか?」

「…違うよ」

「サラはもう罪人だよ。罰さないと」

 サタンは私に剣先を使って、顎をぐいっと持ち上げる。…一歩間違えたら、死んじゃう。

 そして、彼はギラリと目を光らせ、私を切った。首を狙わず、右肩から斜めに…

 私は切りつけられたが、痛みは何も感じられず、ただただ虚しさと、悲しみだけが私を包んでいく。


 シャッ。


 また切られた。首は飛ばない。傷が増えるだけ。

 また切られた…ゆっくりと流れた涙は、何も伝えることができない。


 パン。


「やめろ…!」

 クレイグが撃ったかと思ったら、拳銃を握っていたのは、アンドリューだった。クレイグが彼の腕を握っていることから、きっと奪ったんだろうと推測できる。


「サラを傷つけるな!一度でも…一度でも好きって思った人間をそんな風に…」

「ごめんだけど、俺、人間じゃないから」

 サタンの口から出た言葉は、冷たくって、乾燥していて…まったく感情がなかった。

 そして、彼はまた剣を構える。


「やめろ!次やったら、殺すぞっ!」

 威勢良く見せつけた剣は、残念ながら震えていて、まったく怖くなかった。

 アンドリューは、強い。だけど、きっとサタンの次。だから、サタンは一切目の敵にしていない。

「殺したかったら、殺せば?」

 そのセリフで、アンドリューの目がカッと見開かれる。


「…ふざけんなーっ!」

「やめろ、アンドリュー!」

 クレイグの制止を振り切り、彼は悪魔に刃を向ける。しかし、近づいた瞬間、また黒い煙が現れ、アンドリューを突き放した。

 彼の悲鳴は、これまで一度も聞いたことのないほど痛々しかった。


「…どうして?」

「何が?」

「…どうして、アンドリューを傷つけるの!?」

 私の質問に、悪魔は高笑いで返答した。


「どうしてって…敵だからだろ?それ以外に、何か理由があるのか?」

「例えばそう…」

 私は口を一回閉じてから、そっと言った。


「人間だったとか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ