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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
最終章
91/97

91.根本的に違う

「なぜだ…」

 サタンの周りに、また黒い煙がもくもくと現れる。ゾンビのような立ち姿で、彼は私に赤い目を向ける。


「なぜ、その男なんだ!別に、俺とそうそう変わらないだろ!?」

 憎悪と悲しみ。煙の隙間からギリギリ見える彼の顔は、そんな黒い感情でぐちゃぐちゃになっていた。

 彼の目から、黒い水が溢れてくる。どういうこと…?


「アンドリューと俺。あいつより、俺はちゃんとした言葉遣いをしている!俺はあいつより、背も高い!かっこいい!なのに…なのに…!」

 アンドリューの顔が、少しだけ歪む。イラっとした彼は、剣を握り直して戦おうとする。

「やめて」

 私が制すると、彼は少し落ち着いて後ろへ下がった。

 一歩前に出て、私は深呼吸をする。


「アンドリューとあなたは似ていると思う」

 私はちらっとアンドリューの顔を見た。

「でもね。それは幻想だと思うの。鏡に映った…幻想。実際は右も左も違う」

 サタンの黒煙が、少し薄れて、膝から崩れ落ちた。


「アンドリューは私を見てくれている。でも、あなたはオディール(、、、、、)としての私しか見ていない。根本的に違うの。だから…諦めて」

 私が冷たく言い放つと、アンドリューとクレイグが私の前に立った。

 赤髪の彼が、私に喋りかけた。


「いいか?戦いが始まったら、絶対逃げろ」

「なんで?さっきみたいに…」

「そうじゃなくても、絶対さっきみたいになるよ」

 ぼそりと呟いた彼は、小さな舌打をした。…余裕がないの?


「あいつ…意地でもサラを奪いにくるぞ」

「え…?」

 サタンの涙が、地面にポツリと落ちた。その瞬間、大きな池のように地面に黒が侵食し、そこからさっきよりも多くの黒い煙が出てくる。


「…憎い」

 私はそのセリフにハッとした。…さっき、私が呟いた、あのセリフに。


「憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い… !」

 サタンの赤い目がギロッと光ったかと思うと、その煙はサタンを包み込み、体の形に沿って巻きつかれていく。


「真っ黒…」

 私は小さく呟いた。

 ふわっと浮き上がった彼は、煙が体から漏れ出しているように見えた。

 シャーロットも、同じようなことをしたけれど、彼とは方向性が全く違う。言うなれば…本当に悪魔が取り憑いたようだった。


「…さっきは、黒いボール状に変形して襲いかかってきていたんだ」

 クレイグが歯ぎしりをしながら説明した。

「あの時も、とてつもなく恐ろしかったです。でも、さっきよりも…恐ろしい」

 ロザリーが私の袖をぐっと持った。…怖いよね。とてつもなく…怖い。


「…死ね」

 ハスキーボイスで悪魔が囁き、私たちに襲いかかってきた。


「きゃあ!」

「サラ様!こっちです!」

 この状況で一番怖いのは彼女のはずなのに、気丈に私の腕を引っ張った。ロザリーは唇を噛んで、木を避けながら走った。

 私は置いていかれないように、アンドリューたちに迷惑をかけないように、ただただ彼女に引っ張られるまま、走り続けた。



「行かせるかっ!」

 俺とクレイグは、二人で剣をクロスさせて、サタンの暴走を抑えた。やべーよ…こんなばか力とか…!

 しかし、俺とクレイグの剣は純銀。さすがのサタンも対抗できなくなったのか、後ろに飛んで距離を置いた。


「なあ、アンドリュー。さっきの話し、覚えているか?」

「さっきのって…」

「テレポート前だ」

 彼はサタンから見えないように、銃に弾を入れた。


「いいか?あの煙をバリアー&エネルギー補給機と定義付けをする。そうなると、煙を消したらすぐに済むかもしれないが、バリアーだから攻撃しても意味がない。となると?」

「頭だろ?さっき言ってたじゃないか」

「その通り」

 不敵に彼は笑う。なんだか、俺がばかにした笑い方みたいで気に入らねー…


「さっき、アンドリューが言っていた通り、サタンはサラを狙うだろう。つまり、移動ばっかりの戦いになっちゃう」

「移動しながらの剣術は向かない…となると?」

「俺が銃で引き付ける。でも、きっと銃だけじゃ殺せないから…」

 俺たちの上を、黒い男が飛んで行った。


「俺が会心の一撃を。ってか!?」

 悪魔を追いかけるように、走り出した。


 絶対、消す。

 サタンはこの俺の手で、必ず。

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