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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
最終章
81/97

81.クールに

 俺がサタンの首元めがけて切りつけた。


 しかし…奴も一応バカ(、、)じゃない。スピードを上げた太刀は、一回回って俺のところへ。

 やべっ。俺は体が真っ二つにされる前に、しゃがみこんだ。

 はらりと数本赤髪が落ちる。はえーよ…

 でも…


 ザクッ。


 安全圏から、サタンの足首を刺した。

 しかし、血は全く出ず、サタンが痛がる様子もない。な、なんで…!?


「小賢しい」

 彼の冷ややかな声で、俺の意識は戻った。背中で感じた…切り裂く風。

 俺は瞬時に、サタンから距離を取った。ズキッ…


「大丈夫か、アンドリュー?」

「ただのかすり傷だよ」

 本当に、かすり傷…なのに、異常に痛む。左腕に刺さる痛みの正体はきっと…毒だ。

 この毒…まさか、死ぬのか?グッと腕を掴み、無理矢理止血する。

 死ぬかどうかのことはさて置き、利き手ではない左腕の負傷で済んでよかった。戦えない訳ではない…


「今のでわかった」

 俺の相棒は、俺に不敵な笑顔を向けた。

「バンパイアってのは、体を攻撃したところで、なんの意味の無いらしい。じゃあ、どこをやれば、ダメージを与えることができるか?」

「…武器か」

「正解」

 彼はスッと天井に銃を向けた。銃口が、シャンデリアの光と重なる。


「太刀は、ジャパニーズトラディショナルな武器。とても、効率的で、かっこいいのはわかる。でも…洋刀とは違う弱点がある」

「…ああ。なーるほどね」

「頼むぞ、アンドリュー」

「頼まれたっ!」


 パンと、乾いた音が教会に響く。

 サタンの意識が、銃に向けられる。俺も攻撃を仕掛けようとするが、やっぱり近づけられない。

 じゃあ、誰が攻撃できるか?クレイグだ。

 今のあいつの敵…それは、クレイグ。

 クレイグが両手で構えた銃を、サタンにめがけて撃ちまくる。このヨーロッパな世界観の教会で、彼の周りだけウエスタンな風が吹いている。

 サタンは太刀で抑えるが、なんせデカブツ武器だ。フットワークが悪い。

 クレイグがサタンの近くを走り周りながら、銃で撃っていく。


 しかし…銃にだって、弱点がある。

 弾切れだ。

 でも、これも作戦の内。

 弾を一生懸命詰めているフリ(、、)をしているクレイグに、悪魔の影が映る。

 鎌のような大きな太刀を、サタンは振り上げた。


「もーらい」

「!?」

 俺は『クール』に呟くと、猫のように、音を立てずに飛び上がった。

 不意を突かれた彼は、太刀の軌道を変えることができない。クレイグは安全の確保のため、さっと逃げる。

 ちょうどサタンの太刀が地面と平行になった瞬間、俺は太刀の内側に向かって剣を振り下ろした。


 カランカラン。


 金属の音が、教会に静寂を作る。

 止まった時間。

 多分、その時間はとても短かったと思う。

 でも、何時間も過ぎたような、気持ち悪い風が吹いた。


 バン。


 飛んだ弾は、敵のマントを貫く。

 その一発の後、何発も撃ってマントをズダズダにしてやった。


「羽はもぎ取ったから。バンパイアさん」

 後ろからした声は、マジシャンクレイグの時と少し似ていた。

 自信に満ち溢れた声。何かを楽しんでいる声。

 不謹慎だな…と苦笑するのと同時に、こいつを銃士隊で銃を習わせてよかったと、心から思った。


「…おかしい」

「あ?」

「おかしい!バンパイアの俺がこんな…こんな…!」

「俺たちとお前の違いを言ってやる」

 俺は切り落とした刃先を足で蹴り、父がくれた剣を構えた。


「仲間がいるか、仲間がいないか、だ」

「二対一で勝てるわけがっ…!」

「じゃあ、片方はサラ達を探しに行こうか?それでも、勝つ自信はあるけど」

 ゆっくりと剣を首筋に近づける。真っ白な首から、うっすらと血が流れ出す。

「うるさいっ!」

 サタンは素手で剣を振り払うと、首筋を抑えた。


「フッ…仲間?だったら、仲良しこよしで笑って死ね」

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