80.コンビネーションで!
音が…切れた。
ブツンと、音が切れた。
そして、目の前がグルングルンと回り、気づけば…忌々しいあの場所に着いていた。
「嘘だろ…!?」
何度も来た、うざったらしい思い出しかない…教会もどき。
不真面目なキリスト信者なのに…縁がありすぎだろ。
「アンドリュー…?」
パッと後ろを振り返ると、たくさんの薪を持った、くすんだ金髪野郎が立っていた。
「クレイグ…」
彼は薪を放り投げるように地面に置くと、俺に掴みかかってきた。
「ロザリーはどこだ?」
「…」
「ロザリーはどこだっ!」
「知らねーよ!だったら、サラはどこなんだっての!」
クレイグが俺を押し返すと、俺から顔を背けた。拳が震えている…動揺しすぎだ。
俺もできるだけ冷静を装おうとしているが、やっぱり無理だ。ロザリーがいないのも問題だが、それ以上にサラがいないのが問題だ。
サタンの仕業か…
クソっ!と、俺は地面を蹴る。腹の虫が収まらねー…
それに…と、俺は髪の隙間から、クレイグの顔を覗いた。地面をにらみつけながら、歯を噛み締めている。
ロザリーの計画が、ボツになった。森なら勝算があると思ったのに…
「クレイグ。とにかく、サラ達を探そう。敵が来る前に…」
「もう、来ているよ?」
上の方から、あのキザな声…
サタン!?
俺が振り向いた瞬間、彼は牙をむき出しながら、俺たちの方に飛んで来た。とっさにしゃがんだが、風の強さで、俺は倒れかけてしまう。
バンパイアめ…!空を飛ぶとか、反則だろ!
「ようこそ、我が城へ」
「呼ばれた覚えはねーし、歓迎されたくねーよ!」
「まあ落ち着け、赤髪君」
うぜ…こいつのテンション嫌い!
「どうだった?俺のテレポートは?」
テレポート?
ああ。さっき、急に飛ばされたのは、こいつの魔術的なもののせいってことか。
「…おい。サラ達はどこだ?」
「さあ。それは、シャーロットの案件だからね」
彼はわざとらしく、彼女の名前を強調した。下手な真似しやがって…
「おい、アンドリュー…」
クレイグが剣に手をかけながら、俺に尋ねた。しかし、その手は硬直してしまっている。
「シャーロットって…」
「あのシャーロットだよ」
足をガタガタさせながら、クレイグは座り込んでしまった。
「嘘だろ…?」
肩で息をしながら、彼の顔が真っ青になっていく。身近にバンパイアになったやつがいたら、普通そうなるだろうな。
…つまり、これもサタンの策略。
悪どい。
俺はクレイグをかばうように、前に立った。
「お前、最悪だな」
「言わなかった君が悪い」
ふっと笑うと、奴はあのビッグ太刀を、ブラックホールみたいなところから取り出した。やだな…
「クレイグ。戦いで一番大切なのは、『クール』でいることだ。怒りに任せて、剣を振るうのは」
「…バカがすること。わかってる」
背中で、何かが変わった。まっすぐに敵に向けられた殺気。彼の強いオーラで、俺は思わずふっと笑う。
さすがだ、クレイグ。立ち直りが早い。
彼が小声で俺に指示した。
「コンビネーションでいくぜ」
「了解!」
俺がサタンの気を引くために、先攻を仕掛ける。
しかし、サタンは余裕の表情。太刀を斜めに構えるだけで、俺の攻撃を受け止める。渾身の一撃…ではない。わざと力を抜いて、跳ね返してもらう。
落ち込みきってる演技をしているクレイグに、サタンがふらりと近づく。
「死ね、クレイグ」
大きな太刀が、クレイグめがけて弧を描く。
しかし、首筋ギリギリで目をひん剥いた彼は、バク転の要領で、太刀の上を通過する。
獲物を失った刃先は、無駄に空を切っていく。
「やりぃ!」
スタンバイしていた俺は、サタンに攻撃を仕掛けた。
やっと、チャンスが回って来たぜ。




