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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
最終章
79/97

79.狂気

 後ろで何か重い物が、ボロボロと落ちた音がした。

 ハッとして振り返ると、ロザリーがワナワナしながら、薪を落としていた。


「こんな…こんな部屋じゃ…!」

 そして、彼女はフラフラとしながら座り込んだ。意気消沈というように、肩を落としていた。

 でも、気持ちはわかる。

 野生の獣がつけたような、壁の爪あと。蜘蛛の巣状に割れてしまった、鏡台。もう、火をつけられない、ドロドロな蝋がこびりついた、シャンデリア。

 …ここが、私が前までいた部屋とは思えない。


「大丈夫ですか?サラ様!」

「ええ。大丈夫…」

 なわけない。さっきまで森にいたのに、知らぬ間に城に来てしまった。それに、森で勝負しようと思っていたのに、結局、ロザリーの計画がめちゃくちゃになってしまった。

 ああ。本当に最悪…


「あなたは、綺麗だ」

 聞き覚えのある女の声で、私は振り返った。

 彼女は鞭の要領で、蛇をロザリーに巻きつかせた。毒々しい、変な色の蛇…


「綺麗すぎて、気持ち悪い。私、あんたのことだいっきらい」

「シャーロット…」

 目の前に佇む女性を、私は睨みつける。

 黒に緑が混ざった、気持ち悪い色の髪。チャイナドレスのような、スリットの入ったドレス。私より、年下のはずなのに…とても大人の女性に見える。


「へえー。あいつ、ちゃんと話したんだな」

「あいつ!?」

 私はシャーロットの発言に、思わず顔をしかめた。やっぱり…この人、シャーロットじゃない。

 アンドリューの妹には見えない。アンドリューみたいに、優しい人じゃない。

 …私、こんな風になっちゃうの?

 彼女はただならぬ闇の象徴のように見えて、言い返す気力がなかった。


「誰ですか?この女は…」

 ロザリーの声で、私はやっと声を出せるようになった。


「仮面女よ…」

「え?でも、仮面を…」

「つける理由が無くなったの。アンドリューに…妹だってバレたから」

「え!?」

 そう彼女が息を飲んだ瞬間、蛇がシャーッ!と叫んだ。威嚇され、ロザリーの目に涙が浮かぶ。

「ふーん。あんたがロザリー?」

 蛇の恐怖で、彼女は答えることができない。

 しかし、シャーロットはマイペースに、ロザリーに巻き付いた蛇と戯れ出した。


「あなたの計画、最高だな。賢い人は、大好きだ」

 ふっと笑って、蛇の頭を指でなでた。そして、急にパチンと指を鳴らすと、蛇がロザリーを締めだした。彼女は心から苦しそうな声を出す。


「やめて!やめて、お願い!」

「カラスを巻くのは、とても良かった。でも、良心でカラスを逃したのはいけなかった…森にサラ殿がいることがわかったからな」

「あなた…!」

「見つけたあんた達をテレポートさせるのは、とても簡単だった。あとは、サタン様に気づかれないように、お前を消すだけ…」

 …え?

 消すって!?


「バンパイアだって、殺そうと思えば殺せるんだ」

 彼女は恐ろしい顔を向けた後、短剣を取り出した。

「でも、すぐ殺しちゃ、面白くないでしょ?」

「キャア!」

 シャーロットが私の服を切った。太ももに、ピリッとした痛み。

 そして、私の顔に剣先を向ける。間一髪で避けたが、頰に痛みが走る。


「ちょろちょろ逃げ回って。しかも、反撃もしないし。だいっきらい。綺麗すぎて、だいっきらい」

 彼女のどす黒い声で、私は鳥肌が立つ。

 目が真っ赤。その赤が、暗い部屋で不気味に光る。

 ゆらりと陽炎のように動いた短剣は、私の服と壁をぶさりと刺した。それを、何本も…う、動けない…!


「逃さない。あんたは、ここで死ぬ。サタン様は…私のもの」

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