表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
最終章
75/97

75.勝つ術

 真っ暗な城。妖艶に輝くシャンデリア。

 ほんと、すってき。これからの私たちのゲームを、悪魔に賞賛されているみたい。

 ふっと笑いながら、真っ赤な血が入った、ワイングラスを眺めた。どーしよ。飲まないで、取っておこうかなー?


「シャーロット。久しぶりの兄貴との再会はどうだった?」

「おかげ様で。相変わらず、イケメンでお人好しなのは変わらなかったわ」

 金髪パーマの我が主人は、私の目の前に美しく座った。


 私は、美しいものは全部好き。シャンデリアも、城も、サタン様も、お兄ちゃんも、私も。

 でも、美しさは見た目だけでいい。それ以上美しかったら、逆に醜い。例えば…あの女。サラ…だったかしら?

 でも、サタン様は、彼女に夢中。よくわからないバンパイアね。


「いつかな?君の兄貴が動き出すのは」

「さあ。相当なダメージは食らったはずだけどね」

 お兄ちゃんは、よくわからない人間。父が死んだと知った後、彼は悲しみなんか一切見せず、必死に働いた。父を殺し、母が殺された後も、彼はすぐに遺体の埋葬に行った。そして…私がサタン様のところへ行った後も、サラだなんて女と恋に落ちた。


 本当に…あの男と血が繋がっていなかったら、絶対サラのように嫌っていたわ。

 だから、わからない。私には、彼の行動や心情を理解することは不可能だ。


「サタン様。どうして、サラってやつに依存するの?私じゃダメ?」

 私は頬杖をついて、彼の顔を覗く。主人の目は死んでいた。でも、口元は、とっても楽しそうに笑っている。


「変わったね」

「どこが?」

「行動の全体が。とっても…セクシーって言うのかな?」

 私は少し頰を染めながら、くねくねと動いてみせる。


「サタン様のおかげ」

「そうかい?」

 彼の挑戦的な笑みは、私の心をくすぐらす。


 あーあ。なんで、あの子なのかな?

 私でいいじゃない。私の方が、よっぽど美人で、よっぽど愛している。なのに、彼女。彼女ばかりを見る。


 きっと、サタン様の性格なのね。

 手に入れたい女が、他の男の手の中にあったとしても、意地でも手に入れる。

 彼は恋愛をゲームと捉えている。その姿は、まるで秘宝を求めるトレジャーハンター。でも、秘宝は目的じゃない。大義名分であり、本当の目的は、辿りつくまでの経過…


「まあ、まだ動かなくてもいいだろう。気長に行こう」

 サタン様は、真っ赤な液体が入ったグラスを持ち上げた。

 いやよ。私は気長になんて無理。

 きっとゲームが終わったら、彼は私のところへやってくる。


 だから、さっさと終わらせましょう?サタン様。



「敵の状況を予測できるか?」

 アンドリューの質問に、クレイグが手を挙げた。


「あっちの城にいた何人もののバンパイアは、おそらく捨て駒。元から当てにはしていなかったはずだ」

「その通りだな」

「あっちもこっちも、本命は目に見えている」

 クレイグの真剣な眼差しに、皆が息を飲む音がしたような気がした。

 つまり…こっちはアンドリューとクレイグ。あっちは、サタンと仮面…シャーロット。


「本命同士の正面衝突…が、普通の考え方」

 すると、彼はロザリーに目を向けた。

 昨日、彼らは一緒に夕飯を食べたが、多分、私が期待したお話しはしなかったんだろう。状況説明に、これからの予定…そんなところね。


「まず、動物を使ってくることは、ほとんど確定です。あれは、魔術次第で、いくつでも出せるでしょう。そこで叫んでいるカラスも…」

 彼女はちらりと、カーテンのかかった窓を見た。

 最近カラスが急激に増えてきた。理由は…きっと城への報告のためだろう。


「とにかく、ここら出るためには、カラスの目を巻かなければなりません。その作戦は…これです」

 彼女は私達に詳しい図解を見せた。カラスに聞かれないための対策…ね。

 それにしても、この作戦は素晴らしい。いつもながら、メイドにはもったいない人材。


「さすがだ、ロザリー。ほーんとうに、こいつてーんさい!」

 アンドリューがわざと叫びながら、彼女を讃える。カラスに聞かせているのかしら?でも、ロザリーの顔には、うっすら怒りが…

 クレイグが苦笑いをしながら止めているが、少し楽しそう。とても、美しい計画。アンドリューとクレイグの好きなタイプの計画だわ。

 少し不謹慎かもしれないが、これは成功フラグ。きっと、うまくいく。


「で?どこに誘い出すか決めているのか?」

「もちろんです」

 アンドリュー君が嫌いなの?ロザリー。

 いつも尖ったような口調で返事しちゃって…

 でも、彼女のぶすっとした顔の目は、私の方をじっと見つめている。…あら、可愛い。

 そして、クレイグさん。ロザリーとおんなじ目…

 ちょっと。集団でそんな目しないでよ。

 彼女は気をとりなおして、説明しだした。


「敵の情報を整理します。サタン様は、太刀を使います。しかも、それはかなりの規格外の大きさ。他の武器を使う可能性もありますが、一軍はあの太刀でしょう。そして、仮面の女性。彼女は短剣を主に使うので、接近戦が上手いと思いきや、投げることによって、遠距離戦も得意とします」

 アンドリューがコクリと頷く。両方ともと戦ったことがあるのは、彼だけらしい。


「そして、こっちサイド。まず、アンドリューさんは、とにかく剣の腕が立ちます。サラ様を連れ出した時の何倍も強くなったことは、私にもわかります。そして、クレイグさん。アンドリューさんには負けますが、剣の腕は確か。そして、銃も使える。クレイグさんはこっちを重視すべきでしょう」

 アンドリューとクレイグの顔が、微妙に歪む。なんだか複雑よね。

「この情報から分析して、一番私たちに有利なフィールドは…」

 彼女はゆっくりと、目を開いた。


「森、です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ