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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
74/97

74.彼女の物語 第4章 〜結果論〜

 そして、バンパイア荒らしが起きた。

 その日は、普通の日だった。

 普通に食事して、普通に馬と遊んで、普通に買い物して、普通に寝た、普通の日。

 なのに、バンパイア荒らしが起こった。


 俺の仮説が正しいのならば。

 もう、彼女にとって人間でいる我慢の限界(、、、、、、、、、、)だったのだろう。



 物音に気がついて、俺は飛び起きた。

 壁に立てかけた時計で時間を確認する。…二時?

 ちょっと待てよ…外が明るいぞ?


 しかし、それは太陽の光ではなかった。火事だ。

 カーテンを開けなくったってわかる。薄い生地からは、真っ赤な外の様子が伺えた。

 …どうしよう。行った方がいいかな?

 そう思った瞬間だった。黒い影が、一瞬真っ赤な風景を遮った。

 それは大きかった。鳥のサイズじゃない。つまり…


「バンパイアかよ!?」

 俺は、剣を片手に飛び出した。

 偶然、同じタイミングでクレイグが出てきた。彼も、俺と同じ剣を持っていた。

「アンドリュー、何があった?」

 そして、俺のバカな頭は、規格外にフル回転。俺は目をゆっくりと開けた瞬間、冷たい海の底に落とされたような気がした。

 まさか…!


「あいつら…ボヤ騒ぎを餌に、人間を外に出すって寸法かっ!」

 失笑のあと、俺はまだ見ぬ敵を睨みつけた。…なら、いいさ。正面衝突してやるよ!

「…行くぞ。クレイグ」



 俺達が火災が起きた場所に行くと、まさに地獄絵図という雰囲気だった。

 真っ赤な炎に、逃げ回る人々。悲鳴と激しい靴音が、忌々しいBGMとして流れる。

 やっべ…この混乱の中で、助けることはできるのか?


 ぞっ…


 …なんだ?この寒気…

 バンパイア?

 後ろをチラリと振り向いた瞬間、俺は凍りついてしまった。

 大きな牙。ひんむいた目。こいつ…俺の馬借屋によく来ていたガキだ…

 …殺せない。切れない。どうしたらいいんだっ…!


 ザクッ。


 俺は、空に飛んだ頭に、俺は目がクギ付けになってしまった。

「嘘…」

「何やってんだガキ!」

 ハッとした瞬間、俺は逃げ出した。

 誰かわからない…今思ったら多分アレクさんだと思うけど、その人に助けてもらった俺は、さっきの威勢はなんだ?ってぐらい、走って逃げた。

 どこに向かっているんだろう?わかんないよ。


 助けろよ…親父。

 俺は涙を噛み締めながら、角を曲がった。

 その時見た光景は、未だに忘れることができない。


 バンパイア…いや。サタンが、シャーロットと一緒にいた。

 なぜわかったかって?それはね…あいつが、まっすぐ俺の方を見て、「バイバイ。お兄ちゃん」って言ったからだ。

 そして、彼らは満月に向かって飛んで行った。

 最初は明るくて見えていた影は、いつしか闇に溶けて見えなくなってしまった。


 何もできなかった。

 助けられなかった。

 だけど、俺はどこかでこうとも考えていた。


 最初から助けられなかった(、、、、、、、、)、って。



「シャーロットは、親父がバンパイアになって街を襲った時から、バンパイアになってしまっていたんだ。そのことに、俺は多分気がついていた。だけど、気づかないふりをしていた」

「…」

「そして、結局、彼女はバンパイア荒らしの犯人となってしまった。そして、その原因を作ったのは、俺」

 彼の言葉に、私はなんとも言えなかった。

 その通りかもしれない。でも、そうじゃないって言いたい。


「知らない間にさ。あいつ、ガチでバンパイアになっちまったんだよ。バンパイアの考え方しかできなくなってしまったんだよ。あいつは…もう人間じゃない」

 …やめてよ。そんなこと、言わないでよ!

  私は、だんだん震えが止まらなくなって来た。いつか…私も…?


「俺に刃を向け、俺と似た色の髪を染めてしまった女なんか、俺の妹じゃない」

 淡々と話すアンドリュー。その目に悲しみは、一切無かった。

 隣にいる彼が、とてつもなく遠く見えた。いつか、そんな風に私も突き放されるんですか?

 バンパイアになりたくてなったわけじゃないのに!やめたくて、人間をやめてしまったわけじゃないのに!


「俺は、サラを守る。絶対、バンパイアなんかさせない。だから…お願いだ。俺について来てくれ」

 私は頷くことができない。暗黙の了解という空気が流れてしまった。

 ああ…あの時と同じ。アンドリューが、自分の家族の話をした時と同じ。


 彼の目に、闇夜が美しく映った。でも、その闇は…見たことのないほど、真っ黒でした。

次回から、最終章に入ります!

最後まで、このブラックファンタジーにお付き合いください。


Bye, see you next story...

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