表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
73/97

73.彼女の物語 第3章 〜平穏〜

 天使という生き物は、本当に嘘をつけないらしい。

 俺に助言しにきたことをごまかすためについた嘘が、『雲を追いかけて来たの』。ファンタジーにも程がある。


 そして、俺は前よりはずっと明るくなって、街へ戻った。

 自分ではよくわかんなかったが、俺の家で待っててくれたクレイグの表情から、結構変わったんだろうと自負した。


 そして、彼は俺に紙を一枚渡して去って行った。

 それは、クレイグの父親からの手紙だった。


『アンドリューくん。もし、君がこの街を捨てて、どこかへ行くつもりなら、一緒に行かせてくれないか?

 私のできることならなんでもしよう。いい返事を待っている』


 丁寧な字だった。きっと、俺がクレイグを突き放してしまった後、頑張って説得したのだろう。

 でも…俺がクレイグやクレイグ一家の、人生を狂わせていいのか?という疑問が走った。

 クレイグ達は今、小さな宿場を経営している。国の首都だから、需要は結構高いだろう。

 でも、俺達は、父さんの給料に頼ってばっかりだった。いくらバイトをしても、金はすぐに底をつく。バンパイアが出た家族を、雇いたい人間なんて居ない。

 それに…俺はここでやっていけない気がする。永遠に影がいそうで…ここから消えないと、俺の神経が崩れちまいそうで…


 甘えていいだろうか?

 俺はいつしか、足をクレイグの家に向けていた。



 それからの行動は早かった。

 ぱっと見、『夜逃げ』と思ってくれるように、色々細工した。そっちの方が、後々名前が残らないからな。

 まあ、国の中心部なんだ。夜のうちに数人減ってたところで、なんとも思わないのだろう。


 そして、たどり着いた場所は、首都からは結構離れたところ。でも、観光地として有名で、クレイグ達はまた宿場を始めた。

 俺は、馬借にバイト。そこまでしないと、生活できない。

 でも、変わった。みんなが俺を好奇の目で見ることは無くなった。

 それで、十分。十分、生きていける。



「兄ちゃん、兄ちゃん!」

「ん?どうした?」

「今日も乗せてよ!」

「オッケー!」

 俺は五歳ぐらいの男の子をひょいと持ち上げ、馬のウォルの上に乗せた。


 ウォルは、子供うけがいい。もう今では、仕事用の馬ではなく、子供と遊ぶ用になってしまってるぐらい。

 でも、彼女は楽しそうだし、その事に対して、不満は持ってないらしい。

 俺も男の子の後ろに乗り、パンとウォルを叩いた。彼女は俺たちに気を遣いながら、ゆっくりと歩き出す。


 俺は、この街が好きだ。

 首都はゴテゴテしていて、人も多い。ガキと馬に乗るだなんて、あそこじゃ信じられない。

 それに代わって、ここはとってもいい。

 みんな、のんびりな時もあたっり、素早いときもあったり。時期に合わせて変動する行動で、必要以上に動いたりしないのは、結構嬉しい。

 そして、俺の性分にも合ってる。


 パカラパカラと軽快なリズムを刻みながら、街を一周する。

 挨拶をしながら廻って、みんなすんだら、馬小屋に到着。

 そして降ろして、バイバーイと声をかける。

 こんなスローライフは、だいたい二年ぐらい前から始まった。そのおかげかはわからないが…シャーロットと本当に疎遠になっていた。一緒に住んでいるのに。

 そして…なぜかシャーロットの影に男が見え出した。一日中、外に出ないのに。なぜだろう…


「お、お兄ちゃん…」

「ん?どうかした?」

 すると、少女はもじもじしながら、俺を見上げた。

 もしかして…


「乗る?」

 俺がニコッと笑ったら、彼女はゆっくりと頷いた。

 女の子だから丁寧にウォルの上に乗せ、俺は後ろに乗った。


 …もし、父さんがバンパイアにならなかったら、俺とシャーロットはこんな風に過ごしていたのかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ