68.変化
朝。私たちは朝食をみんなでとった。
久しぶりに、この丸テーブルは小さいな…と思った。
そして、みんなは変わった。
ロザリーは朝食をとる時、全然喋ることはなかったが、今日はクレイグと楽しそうに喋っている。
そして、クレイグもなんだか大人になったような気がした。なんだか…勇ましいと言うのかしら?そんなオーラが、彼の周りに漂っていた。
でも…アンドリューは悪い意味で変わってしまった。まるで、抜け殻みたい。目が死んでいて、昨日はずっと寝ていたのに、まだ眠そうだった。
私?私は…
きっと、上品になったでしょうね。だって、私は牙を隠しながらスープを飲んでいるもの。…でも、これは飲みにくいわ。
一つのテーブルに、一人だけ人外がいる。
きっと、考えられないでしょうね。
「クレイグさんは、意外と早く帰って来ましたね」
「ん?なんで?」
「だって、アンドリューさんは一人だけで帰って来たみたいだったから…」
アンドリューのスープをすくうスプーンが止まった。その生気のなかった顔が、少しだけ赤く染まる。
クレイグとロザリーは、アンドリューから聞こえないように背を向ける。
「アンドリューはサラにすぐに会いたかったから、一人で帰ったんだよ」
…クレイグは、わざと私たちに聞こえるように話しているでしょ?
「だったら、あなたはなんでアンドリューさんが帰って来た後、すぐに帰ってこれたのですか?」
「ロザリー。方向オンチが寝ずに闇雲に走り回るって人と、ちゃんと地図を持った人がちゃんと休みながら行動する人。どっちがアンドリューかわかるだろ?」
そして、彼らは小声で笑いあった。アンドリューに失礼よ?
「そうだ、サラ。伝えておきたいことがあるんだ」
クレイグは、急に神妙な顔つきになり、私の目をじっと見た。
「ルシフェル伯爵が死んだんだ」
「…そう」
…知ってるよ。サタンから聞いたもん。
「アレクさんって覚えてる?その人が倒したんだ」
あれ?アンドリューじゃないんだ…
アレクさん、強いんだね。
ん?じゃあ、アンドリューは何をしていたの?
すると、クレイグは私の目の前で手をブンブンと振った。
「…どうかした?」
「いいや…」
彼は頭に手を回しながら、私から目を逸らした。
「あいつ、バンパイアだけど、一応育ての親なんだろう?何か、思うところもないのかな?って」
「育ての親なわけないわ。伯爵は、私を育てるためにお金を使ってくれただけ」
私はふっと歯を見せないように笑いかけた。
「マリオンが育ての母。いろんな意味、ロザリーもね。だから、二人が死んじゃったら泣いちゃうわ」
ガチャン。
急に音が全くしなかった場所から、皿やフォークなどの音がした。
アンドリューがふらりと立ち上がると、食べかけのパンにスープをたっぷりつける。ドロドロになったパンの端っこから、バクリと大きな口を開けてパンを食べた。彼の顔に、たくさんのスープがついてしまう。
アンドリューは袖で豪快に顔を拭くと、彼は私の方を向いた。
「サラ。今晩付き合ってくれない?」
「…え!?」
彼はボソボソ言いながら…デートのお誘い!?
「クレイグ。ロザリー。俺、今日はサラと二人でディナーを食べたいんだ。いいか?」
二人は顔を見合わせた後、クレイグが肩をすくめた。
「いいよ。行ってらっしゃい」
「すまない…」
彼はまたぼそりと言うと、すぐにどこかへ行ってしまった。




