67.バンパイアの誓い
その日は大したことができなかった。
そりゃそうよ。アンドリューはご飯の時間だけ起きてきて、あとは寝ていたし、ロザリーは風邪がひどくなって、一日中白目を剥いていた。
でも困ったわ…夕飯が近くなって、私は頭をひねる。
…食料がない。どうしよう。
街はまだオレンジ色に染まっているだろう。私は死ぬのが怖くって、頭を抱える。
どうやって買い出ししよう!
「サラ様?お二人は大丈夫ですか?」
優しい声に気がついて、私は階段を覗いた。マリオン!
「全然だめ。片方は疲れ切っていて、片方は高熱。やってられないわ」
「そうですか…付きっきりで疲れましたか?」
「別に…」
すると、マリオンは階段を登ってきて、そーっとベットの中を見る。優しいため息の後、彼女は苦笑いを私に向けた。
「もしよかったら、お買い物でも行ってみたらどうですか?」
「え!?や、やだっ!」
「…?」
マリオンのふっくらした顔にシワが寄る。
…あ、そうだ。
「マリオン。頼まれてくれない?」
バンパイア一日目を私はなんとかやり過ごした。
二人を見守りたいから、お使いして?で、よくマリオンは動いたわね…
そして、真夜中。もう一人の戦士、クレイグがやっと帰ってきた。ロザリーの目に少しだけ水がたまっていたことは、私の中にしまっておく。
みんなが眠りについた頃。やっぱり私は眠れずに、星を眺めていた。
もう夜の風景しか見れない。太陽は一生拝めないのね…としょんぼりする。
でも、やっぱりバンパイアになったような感じがしない。
私はゆっくりとキッチンまで移動し、にんにくを探す。
バンパイアが嫌いなものは、にんにく。だから、それをみたりしたら、確証が得られるんじゃないのかな?とにんにくを一欠片取る。
皮をむいた後、包丁で切ってみる…うっ。き、きつい!
ツーンとする匂い。わかっていたけど、いつもの何十倍も強く匂う。
慌てて片付けた後、私はがっくりと頭を下げた。…本当にバンパイアじゃない。
不意に私は、消えたいと思った。
アンドリューに嫌われる存在でいることが、とにかく嫌だった。でも、それと同時に、それでも離れたくないという思いもあった。
なんなのよ…どうしたらいいのよ。
私はまた、洗面所の鏡を見た。
…あれ?いない…
いない!?
どういうことよ!?朝に見た時はいたじゃない!?
その時、私はハッとした。そういえば、バンパイアって鏡に映らないんだった!
…もー、これは無理よ…精神的に、かなりダメージを受けた気がする。
でも、なんで?朝に鏡を覗いた時にはいたじゃない…
「もしかして…だんだん本当にバンパイアになっちゃうのかな?」
私はそっと牙を触ってみる。心なしか、少し大きくなった気がする。
じゃあ、今は血を吸いたいと思わないけど、いつか…いつか、そういう風に…?
そうなったら…私、アンドリューを殺してしまうかもしれない。
私は呆然としていた頭を起こして、窓辺に向かった。
「アンドリューのお父さん、お母さん。私、誓います。もし、アンドリューの血を吸いたいだなんて思ってしまったら、太陽の光を浴びて、永遠の命に終わりを告げます。絶対にアンドリューを、みんなを傷つけません。誓います」
その時、流れ星が見えた。
その景色は、城にアンドリューが迷いこむ前に見た流れ星とよく似ていた。




