表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
66/97

66.絶望と絶望

「だって、私、アンドリューの妹だもの」


 妹…?

 俺は目をそらしていたが、ゆっくりと彼女の顔を見た。


 …シャーロット!

 知らないうちに、俺の握力が無くなってしまう。カランと乾いた音をさせて、剣が俺の手から落ちた。

 冗談じゃねーよ…

 過呼吸になりながら、俺は後ずさりしていく。足が震えている。手が震えている。

 ダメだ…こ、殺せるわけがない!


「嘘だ…」

「嘘じゃないわ」

「だって…シャーロットの髪色は、赤みがかった茶髪だ!そんな黒と緑が混ざったような、奇妙な色じゃない!」

 ふふふと笑うと、彼女は猫のように目を細めた。

「染めたの。この髪、綺麗でしょ?」

 染めたって…ふざけんな!

 父さんと母さんの髪色が混ざった、綺麗な髪だったのに…なんで、なんで!


「シャーロットが、そんなことするはずない!」

「じゃあ」

 彼女は一気に間を詰めた。

「もっと近くで見てみたら?」

「…!」

 短剣が速い!さっきから、ギリギリで避けている。

 …まずい。さっき、剣を落としてしまったし、こんなに動揺しているのに、戦えるとは…

 ダメだ!生きて帰らないといけない。サラを助けないといけないんだ!

 俺は椅子の上を走って、剣を拾った。切り替えろ…どうせ…どうせ嘘だ!


 パアン。


 …銃?クレイグ!?

「アンドリュー。遅いぞ!」

 彼の叫び声の後すぐに、また何発かの銃声がした。

 場所は…天井!?


 そうか。サラを助け出した日、俺たちを救出してもらった時に使った天井!

 ふと俺は上を見る。やっぱりほとんど直していない!…日中は行動できないから、補修もほとんどしていなかったんだ!だったら、数発の銃で…壊れる!


 バラバラバラ。

 すっと明るい光が差し込む。太陽だ!

 仮面女は、ちょうど太陽の下にいたのに、すぐに避けてしまった。

 しかし、このおかげで、仮面女と俺の間に光の壁ができた。そして、偶然…いや、必然か。俺はクレイグサイドにいていた。


「これで逃げれないな、仮面女」

 クレイグが銃を構える。拳銃が黒光りした。

「やめろ、クレイグ!」

 俺は思わず彼の手から銃を払ってしまった。カランと音を立てながら、遠くに飛んで行ってしまう。

 彼の呆然とした表情で、俺はやっと自分がやったことの重要さに気がついた。


「アンドリュー…?」

「何やってんだ、俺…」

「大丈夫か?」

 …大丈夫じゃない!

 クレイグがもう一丁の銃を取り出した頃には、仮面女…いや、シャーロットは消えていた。


「しっかりしろ、アンドリュー!」

「サラ…」

「おい、聞いているのか!?」

「サラ!」

 気づいた頃には、街に向かって走っていた。正直どこにあるかわからなかったけど、でも、走った。

 その時、俺の頭の中では、仮面女の声がこだましていた。

 …俺は、妹を倒すことはできない。



 ロザリーの声で、私はやっと目を覚ました。

 …何があったの?

 私は立ち上がると、体がカチンコチンになっていた。…床で寝てたんだ。


「サラ様!どうしたのですか!?地面なんかで寝ちゃって!」

「どうってこと…」

 少し喋った瞬間に気がついた。…口に違和感がある。


 もしかして…牙?

 私は恐る恐る、手で歯を触った。…ある。

 その時、私は絶望という意味を、本当に理解した。

 知らないうちに、涙が出ていた。でも、中身は空っぽで、何も考えられない。

 調べた本に書いてあった。バンパイアになったら、脳細胞に支障をきたすらしい。多分、それで考えられなくなってしまったんだろう。


「大丈夫ですか!?私、何か悪いことをしましたか?」

「してないわ」

 私は彼女に向かって、歯が見えないように微笑みかけた。

 …別に、血を吸いたいとは思わない。

 要するに、私は理性のあるタイプのバンパイアってことかしら?


「なら良かったです。私なんか、森の中で放置されていたんですよ。風邪引いちゃって…」

 そして、ロザリーは盛大にくしゃみをした。あらあら…鼻水垂らしちゃって。

「わかったから、横になっていなさい。私が朝食を用意するから…」

「すみません…」

 彼女はスタスタとベットに向かった。

 バンパイアって…意外と人間っぽいのね。というか、私は本当にバンパイアになってしまったの?

 私は洗面台の鏡で、牙を見た。…やっぱりある。

 小さくて、別に日常生活に支障はきたさないけど…

 でも、確実に何かが変わった気がする。

 何かが…消された気がする。


 きっと、このまま黒に染まっちゃうのかしら?と、ちょっと感傷的になってみる。

 …何思ってんのよ。元から黒じゃない…

 不意にアンドリューの顔が浮かぶ。彼は、私がバンパイアになっちゃったって知ったら…どうするんだろう?


「サラ!」

 バンとドアの音を立てて、ちょうど考えていた人が帰ってきた。

「アンドリュー!」

 久しぶりに見た彼の顔は、とても疲れていて、眠たそうで、心配そうだった。


「おかえり、アンドリュー!大変だったね。クレイグは?」

 すると、アンドリューは私の質問に答えず、急に抱きついた。

 …服がボロボロ。髪も葉っぱだらけじゃない!


「大丈夫?」

「…」

「アンドリュー?」

「…サラだ。良かった…」

 え?良かったって…

 そう聞こうとした頃には、彼は私の肩に顔を乗せて眠っていた。

 …これは、朝食が遅くなりそうね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ