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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
すれ違い 〜サラサイド〜
63/97

63.フィアンセ

 目を覚ます。

 この寒気…嘘でしょ!?

 まさか、まさかロザリーが…!?

 恐る恐る振り返ったら、牙をむき出しにしたロザリーが笑っていた。

 でも、ロザリーがバンパイアなわけ…

 私はハッとした。


「あんた、ロザリーじゃないでしょ?」

「やっと気づいてくれたんだ」

「…!」

 ロザリーの姿なのに、声はサタン。間違いない。

 この人は…バンパイアのサタンだ!


「なんだよ。久しぶりにフィアンセに会った反応とは思えないね」

「フィアンセ…!?」

 そんなこと、私は認めていないから!

 私が動揺を隠せないでいると、サタンはどこからかマントを取り出し、竜巻のような風が吹いたかと思うと、彼は元の姿に戻っていた。


「ロザリーはどこ?」

「近くの森で寝ているよ」

「まさか…!」

「大丈夫。死んでない。もちろん、俺と同じ種族にもなっていないよ」

 …そんなの、信じれる訳ないじゃない。

 彼は、綺麗な笑顔を私に向ける。でも、目には光がなく、表情がだんだん歪んでいくように見える。


「どうして…」

「ん?」

「どうして、ロザリーに森に行かせることが出来たの!?それに、このドアには十字架を…」

「相変わらず、ばかだね」

 私は彼の勢いに押されて、思わず床に尻餅をついた。サタンの高い背のせいか、彼の顔がよく見えない。


「森に行かせるぐらい簡単さ。俺の魔術で操るだけ…日中でもできるよ?」

「じゃあ…」

「あのお飾りは、オディールが隠してくれたじゃないか!」

 …え?

 そんな、隠すとか…

 してた。

 私の後にロザリーが入って来たから、私がドアを開けただけで、自然に十字架を隠すことができる…

 一杯食わされた。


「言っとくけど、自業自得だからね」

「ち、違うから!」

 私が真っ青になりながら頭を抱えていると、ふと彼が私を抱きしめた。


「ここまでしないと、サラと会えないと思ったから…ごめん」

 …何これ。

 なんで、こんなふうに優しく…?

 逆に恐ろしくなり、私の震えが止まらなくなる。


「サラ。君のことを、ちゃんとサラと呼ぶよ」

「え?」

 どういうことよ。こんな言葉をかけられているのに、恐怖しか感じない。


「あのさ。ルシフェル伯爵が死んじゃったんだ」

「…伯爵が?」

 もしかして…アンドリューが?

 不意に私はアンドリューを心配した。ルシフェル伯爵と戦っただなんて…怪我していないかな?変な魔術をかけられちゃったりしていないかな?傷ついて…いないかな?

 すると、急に腕が私をもっと締め付けた。く、苦しい…


「あの男のことを考えていたのか?」

「…あんたには関係ないでしょ!?」

 私はすぐに腕を振り払い、サタンから距離をとった。…腕が痛い。

「サラ。君は俺から逃げられないよ」

 …なんなのよ、こいつ!

 怖いし、気持ち悪い。すぐに…すぐに逃げなきゃ!

 後ずさりをし続けていると、私の背中にドアノブがあたった。

 そうよ…逃げなきゃ!今すぐドアを開けて、ロザリーを見つけ出す。そして、アンドリューとクレイグと合流し、サタンから…逃げなきゃ!逃げ続けなきゃ!

 夜が明けるまで、逃げ続けられたら…多分。ううん、絶対逃げられる!


 私はドアノブに手をかける。

 ガチャン。

 ガチャン、ガチャン、ガチャン、ガチャン。

 …開かない?

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