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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
すれ違い 〜サラサイド〜
62/97

62.五秒後

 あと、十分。あと十分で、ディナーができる。

 最後の煮込みが終わったら、完成ね。

 でも…これは、いろんな意味でまずい状況。

 しーんとしていて、BGMはコトコトと煮込む音。この音は、張り詰めた空気にもっと緊張を足していく。


「さて…」

 …や、やめてよ。

『さて…』って台詞は、名探偵が謎解きをする時に使うやつじゃない。

 私は、マリオンがジョニーさんを崖に追い詰める図を連想する。

 ダメだ…


「すまなかった!」

 先手をきったのは、容疑者のジョニーさんだった。彼は思いっきり机に頭を押し付けている。

 でも、その行動は正解よ、ジョニーさん。潔く認めた方が、罪が軽くなるって言うしね…

 そう思いながらマリオンの方を向くと、彼女は…え?あわあわしている。なんで…?


「なんであなたが謝るのよ!」

 え…?

 名探偵が折れ…いや。とりあえず、推理小説思想から離れた方がいい。

「私が悪かったの。この年で、乙女みたいにあなたにあれこれ…変になってたわ」

 …自覚あったのね。名探偵さん。


「ジョニー。少し、男のくせにお掃除道具を買うだなんてって思ってしまったの」

「ははは…君がいなかったおかげで、お掃除癖がついちゃってね」

「ごめんなさいね。ほったらかしにした私の方が悪いわ」

「買う前に相談しなかった僕の方が悪い」

 …以下略。

 わかるでしょ?ここから、「私が悪かった」「僕が悪かった」の言い合い。長くって、書いてらんない。

 でも、略せるってことは、また熟年ラブラブ夫婦に戻ったってわけ。

 見ているこっちは、口角ピクピク苦笑いものなんだけどね…


「ロザリー。これで、追い出されずに済んだわね」

「はい!」

 私たちは顔を合わせて、ふふっと笑った。


 よかった…アンドリューとクレイグの帰る場所がなかったら、大変ですもの。

 そんなこんなで、謎の言い合いが終わった頃には、ビーフシチューの玉ねぎはもちろん、主役のお肉も溶けてしまい、中途半端に素敵な晩餐になってしまったのだ。

 味はもちろん、美味しかったけどね。



 晩餐の後、しばらくみんなで喋っていたら、いつの間にか真夜中になってしまっていた。


「アンドリューのためにも、早く寝なさい!夜更かしは、お肌の天敵よ!」

 …夜更かしの原因はマリオンのせいなのよ?

 とは言えないぐらいに、ラブラブな二人。私たちは黙って従うことにした。

 部屋に行くと、少しだけ冷えていた。

 でも、もう眠たかったから、私はすぐにベットに入ることにした。


「オディール様?」

 …オディール様?

 眠気まなこで、私はベットから体を起こす。

「ロザリー。寝ぼけているの?私の名前は、サラ。いつもそう呼んでいるじゃない?」

「ああ…そうでした」

 ロザリーの姿が、窓から刺さる月光でよく見えない。


「要件があるなら、早く言って?私…眠いから」

 なんて言って話を催促したが、私の頭は九割九分寝ている。

 そのままロザリーの話を聞かずに、パタリと眠ってしまった。



 …だいたい、五秒だけ。

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