60.永遠の恋
「さよならの贈り物、ですって」
マリオンがそう言った瞬間、ロザリーが慌ててジョニーさんを探しに行った。
なのに、妻の方は全く動こうとしない。
「マリオン。行かないの?」
「…」
そっか。その選択肢に至ったんだ。
でも、悲しかった。
マリオンと久しぶりに街で出会った時、彼女はジョニーさんを自慢していた。キラキラしていた。
なのに、さよならだなんて、悲しい。
そして、私は現実を思い知らされた気がした。いつか、恋は終わってしまうってことを突きつけられたような気がして。
私もいつか、アンドリューを好きじゃなくなる日が来るのかしら?と思うと、悲しくなってしまった。
「ねえ、マリオン。恋ってなに?」
雫が落ちるように呟くと、彼女はがたりと音を立てて椅子を立った。
「それは、賞味期限があるものなの?」
「…」
「それは、いつか枯れてしまうものなの?」
「…」
「永遠って無いの?」
「…」
「答えてよ、マリオン!」
私の叫びは、部屋を反響して、窓から外に消えていく。
誰にも伝わらない。誰も変えられない。
ううん。違うよ。
誰もじゃなくて、マリオンよ。マリオンに伝わらないと…マリオンの意志を変えないと!
なのに、何も変えられないような気がして。何も、変わらないような気がして。
私の無力さに飽き飽きする。
「永遠はありません」
まるで、そよ風のような、透き通った声がした。しかし、その透き通りは、ジョニーさんとの終わりを示していて…なんでよ。
永遠なんてないって。なんで?
ふと、私の頭の中に、アンドリューの姿が現れた。
私と彼は、永遠じゃないの?
じゃあ、私は…どうしたらいいのよ。
「…サラ様?」
ふと気が付いた時、私の頰に何かが伝っていった。
あれ?これって…
「涙?」
なんで?なんで流れているの?私のことじゃないのに。マリオンとジョニーさんのことなのに。そして、アンドリューと永遠じゃないと決まったわけじゃないのに…どうして?
「サラ様は、優しいんですね」
ふと私の目元に、シルクの布が当てられた。
J&M…そう刺繍しているのに、どうして永遠じゃないって言うの?
「マリオン…お願いだから考え直して。この飾り、本当にお別れの挨拶がわりだと思う?この綺麗なお花…別れる人のためにする?」
そうして、マリオンはちょっとだけ。ちょっとだけ泣いた。
「私、バカみたい。ジョニーが勝手に掃除用具を買っただけで、こんなに怒るだなんて」
…きっと、マリオンが乙女だからよ。
遠距離恋愛が終わって、やっとずっと近くにいれるようになった。だから、少しでも言ってくれなかったのが許せなかったんだろう。
お熱いことね。
「さあ。ジョニーさんのために、何かしておきましょうよ。マリオン。ジョニーさんが好きな食べ物は何?」
この時は気づいていなかった。
どこまでが、彼らの計画だったのか…
そんなこと、わかるはずもなかった。




