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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
すれ違い 〜サラサイド〜
58/97

58.帰ってきて!

 私は、家の前に十字架を飾った。

 木の枝で作った可愛らしいものだが、ちゃんと神父さんが作ったものだ。効果抜群!だろう。

 これは、べつに飾りってわけではないけど、おかげでドアが可愛らしくなった。

 そのあと、私はロザリーと一緒に雑貨屋と花屋にに行き、部屋の飾りをたくさん買った。


「可愛くなりましたよねね」

「ええ。可愛くなったわ」

 想像以上の出来だわ。絵本の中にある世界みたい。

 窓辺には、ピンクの花。濃い茶色のカーペット。そして、ちょっと古かった布団カバーも、カラフルなカバーに変えた。


 まさに、理想の生活。

 私がずっと思っていた、理想の生活だわ。

 そして、ここにアンドリューとクレイグが帰ってくるのね…ああ。そう考えるだけで、嬉しいわ!

 私はにっこりと、ロザリーに笑いかけた。


「早く帰ってきてほしいわね!」

「ええ」

 すると、彼女は少し口を押さえて笑った。

「どうかした?」

 私が尋ねると、彼女は私に負けないくらいの笑顔を私に向けた。


「ちょっと前より明るくなって、よかったな。と思いまして」

「それっぽいこと、この前も言ってたじゃない」

「そのくらい、嬉しいってことですよ」

「からかわないでよ…」

 私が頰を膨らますと、ロザリーが意味深な視線を向けた。


 すると、誰かが階段を登ってくる音がした。

 ロザリーが少しため息をつきながら、ドアに近づいていった。きっと、あの人ね。


「どちらさ…」

「サラ様!このマリオンを、しばらくの間泊めてくださいまし!」

 …マリオン。別にいいけど、あなたのおかげで、ドアに潰された人がいますよ?



 ボロボロなロザリーが、ヘロヘロになりながら紅茶を注いだ。

 マリオンの分だけコップを温めなかったのは、絶対さっきの恨みからね。


「どうかしたの?顔が真っ赤よ?」

「どうもこうもないですよ…」

 彼女はまるでお酒を飲むような雰囲気で、紅茶を煽る。ロザリーがこっそりいーっとしたのを、私は見逃さない。


「ジョニーがひどいんです!またお店の人に騙されて、使えない掃除用具を買って…」

 ぶはーと、豪快なため息をつく。隣のロザリーの様子からして、もう絶対にマリオンに紅茶をいれないと誓ったのだろう。

「でも、それだけお店を綺麗にしたいってことでしょう?ジョニーさんらしいじゃない」

「使えなかったら、全く意味ないです!」

 …あらら。


 マリオンは、『使えない掃除用具を買ってきた』ということを怒っているのではなく、『自分に相談なしに買ってきた』ということに怒っているんでしょうね。

 私がそう話すと、彼女は涙目で頷いた。


「その通りですよ、サラ様。なのに、あの男は!」

 マリオンの大きな拳が、机を叩く。カシャンとコップが音をたてたので、ロザリーが慌てて片付けた。ああ…まだ飲んでいたのに。

 ロザリーが怒りながらキッチンに入っていくと、マリオンに向かって、「ジョニーさんが信じられないなら、離婚すればいいのに〜」と言い放った。


「何ですって…!?」

「マリオン!落ち着きなさい!」

 私が大きな声を出しても、全然効かない。

 マリオンがロザリーに向かって、どしどしと歩き出す。私が通せんぼしても、片手ではねのけられた。

 イテテテ…


「年上の私に向かって、どういう口をするの!」

「もう召使いじゃないから、いいじゃないですか!」

「はあ!?」

「だいたい、お掃除道具を買うとか、ちょー『主夫』じゃないですか!もっとありがたがったらどうですか?」

「い、や、だ、わ!」

「じゃあ、離婚…」

「いやって言ってるでしょう!」


 …アンドリュー。早く帰ってきて!

 これ以上、女の争いなんか、見てらんない!

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