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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
すれ違い 〜サラサイド〜
56/97

56.草葉の陰サイド

 草葉の陰から、私達はサラ様を見送った。


「…その言い方じゃあ、僕たちが幽霊みたいじゃないか」

「幽霊のアフレコしたんだから、正解じゃない?」

 まあ、そうだけど…と、我が夫、ジョニーは肩をすくめる。

 この気弱な男のどこから最強戦士の声が出たのかしら…?こんな演技力があるなら、役者にでもなればいいのに。


「しかし、ケンカにしては、様子がおかしかったな」

「そうね…」

 一人で寂しくお墓参りは、普通に考えて変ね。

 しかも、自分の両親ではなく、アンドリューの両親。そして、ケンカの理由も、アンドリューの両親。

 因果関係がわからないわ…


「とにかく、マリオンはロザリーに話した方がいいんじゃないか?」

「そうねえ…」

 私は頰に手をあて、首をかしげた。頭がいたいわねえ…

「とりあえず、幽霊役を続けるか、聞き耳を言ってしまうか…」

 彼はそんなことを言って、頭をぽりぽり。…他人事ねえ。


「ねえ。サラ様って、サンタクロース信じていると思う?」

「そもそも、サンタクロースを知らないと思うけど?」

「…」

 そんなことを聞いたことが、ある気がする…



「こんにちは、サラ様」

「あら。マリオンじゃない!」

 彼女は、満面の笑みを無理矢理つくってみせる。しかし、彼女の笑顔はまるで仮面のような…模範解答すぎてどうしたらいいかわからない、笑顔だった。

 フランス人形によく似たサラ様。今は、城に住んでいた時のように豪華な服ではないが、綺麗な空色の服で、フランス人形のような高貴さは変わらない。

 私は緊張を隠しながら、少し彼女に背を向けて、話しだした。


「サラ様は、幽霊って信じていますか?」

「え?なんでそんな話しをしだすの?」

「そ、それは…」

 聞き耳立てて、ついでに幽霊アフレコしたって言えない…

 だって、あの天然純粋お嬢様よ!?侮辱行為だとかなんだって…


「あのね、マリオン」

 私は思わずビクッと肩をあげる。

「アンドリューのお父さんとお母さんと話したんです」

「…」

「とっても素敵な人だった!優しくて、私たちのことをよく考えてくれて…」

 サラ様の顔に、木漏れ日が美しく映る。目にも入ったきらめきが、彼女の感情を強く表す。

 …言えないわ!こんな、たった五歳の女の子が美味しいものを食べた時のような、満面の笑みをされてしまっては…もう、真実を言うことができない…


「きっと、アンドリューとも仲直りできる。だって、彼らがいるのですもの。きっと…きっと、アンドリューは帰ってくる。きっと、また元どおりになるわ」

「…そう…ですね」

 そうよ。そうよ!

 私は、アンドリューの両親の言葉を代弁しただけ…

 だから悪くないわ。悪く…悪く…


「あれ?マリオンさん?いらっしゃって…」

「わたくしは、わるくありましぇーーん!!」

「…」



 私は、マリオンが消えていった階段をのぞいた。

「マリオン…どうかしたの?」

「さあ…」

 ロザリーは肩をすくめたあと、私の顔をじっと見た。

「どうかした?」

「いえ…」

 彼女はふふっと笑ったあと、三日月型に目を細めた。


「サラ様が吹っ切れたみたいなので、よかったなって思ったんです」

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