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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
すれ違い 〜アンドリューサイド〜
53/97

53.気配

 どこだ…どこから出てくる!


「…アンドリュー。前からくるぞ」

「え?」

 正面…?

 そんな、堂々と…!?


 ゾワッ。


 温度が一気に冷える。風が吹き、クレイグが持っていたランプが、カシャンと音を立てて壊れる。ぼっと火がついたかと思うと、風でかき消される。

 この感覚…奴らだ。


 カシャン。


 構えていた剣に、火花が飛ぶ。

 接近戦はまずい。俺は剣を押し返して、距離を取る。

 …重い。俺の俊敏さが、通常の二分の一ぐらいに減ってしまっている。さっきまでの仕掛け…俺たちの体力を落とすためだ。

「卑劣な奴めっ…!」

 肩を上下させ、酸素を吸う。汗は暑さからなのか、ちょっとした風邪にかかったからか、それとも…


「アンドリュー、冷静になれ!」

「はい!」

 アレクさんは確実に攻撃していく…が、わからない。

 なぜだよ…なんで見えない?

 ランプが消えてから、結構経ってる。しかし、まだ目が慣れてこない。…全然、見えない。


 カン。


 俺の前で、金属の何かがぶつかる音がした。アレク…さん?

「気配だけで戦え。でも、出来るだけ早くここから出ろ。わかったか?」

「わかったかって、そんなこと…」

「お前にできないのか?」

 彼の声が、地下の部屋中に響き渡る。


「…できます」

 俺はすぐに振り返って剣を受けた。いる…気配を感じる!


「できます!」

 すぐに跳ね返して距離を取ると、俺はアレクさんと背中合わせになった。

 守る。

 アレクさんを、先輩を、クレイグを。そして、サラを。


「こんばんは。アンドリュー」

「…こんばんは」

 …なんだこれ。こいつ、サタンの声なのに、なんだか違和感が…


「うっ!」

 俺に短剣が向かってくる。紙一重でかわすが、風の音がビュッと鳴る。

 …当たったらまずい。

 でも、短剣ならいい。接近戦じゃないと攻撃できないから、距離を置いたら、必ず近づく。

 どこだっけ、出口…


 ふっ。


 風?風だ。さっき入ってきた場所からだ。絶対…!

 天井の簡素なシャンデリアを使って宙に飛び、ドアの近くまで一気に移動する。


「ここまでおいで。バンパイアさん」

 鼻で笑った後、すぐに彼は近づいて来た。

 さあ、デスゲームだ。



 接近戦じゃなかったら戦力外、と思ったら、意外と違うらしい。

 短剣をダーツの要領で投げてきやがる。しかも、クレイグさんお得意の拳銃並みのスピードだ。

 避けれるのがやっと。攻撃できない…


 逃げて逃げて、逃げ続けて、たどり着いたのは例の教会もどき。

 俺が神父もどきに変装して、クレイグがボロのタキシードを着て、トマトを吹き出した…あの。

 ふと、あの時を思い出す。あの時…あれ?あの時、サタンは…


「アンドリュー殿はこの程度か?」

「…っ!」

 隠れていると、サタンの声が聞こえた 。そのあざ笑うセリフは、俺に危機感を覚えさせる。

 どうしたらいい?こんなこと、出来るはずが…


 俺は、一瞬時が止まった気がした。

 …目を見開き、心臓が高鳴る。さっきまでの汗が止まり、少し平衡感覚を失う。


『俺たちは…まさか、マリオネットじゃねーよな?』


 クレイグのつぶやきが、耳の中で反響する。真面目に聞いていなかったのに。


「…マリオネット?」

 俺は、まさかの可能性に、思わず吐き気がしてしまった。

 こいつ…まさか…

「サタンじゃない…!?」

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