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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
すれ違い 〜アンドリューサイド〜
52/97

52.友達だからって、甘えるな

 …ふざけやがって!

「俺はサタン達を追いかける。クレイグは先輩達を…」

「おい、待て。お前、一人で奴らを討つつもりか!?」

 クレイグが俺に掴みかかった。珍しく、彼の目が血走っている。


「…これは、俺が倒すって決めたんだ。邪魔すんな」

「さっき、先輩の命を優先するって、決めたよな?」

 彼のセリフに、俺はハッとした。自分の体温が異常に高かったことに、今更気付く。


 俺は、目をそらし、ぼそりと呟いた。

「…ほっといてくれ」


 パシン。


 広い部屋に、高い音が鳴り響いた。俺の髪から汗が落ちる。…こんなに汗かいてたっけ?

「命を無駄にする奴と友達になった覚えはない」

 俺は、思わずぞっとした。クレイグの殺気。でも、いつものとは違う。

 汚いものを見るような…とてつもなく、冷たい視線。


「俺、一人で助けに行く。サタン達は諦めるから」

「…」

「アンドリューは、殉職したことにしてやる。感謝しろ」


 彼は、俺の足を思いっきり蹴った後、スタスタと奥に消えていった。…さっき、見たあの背中。もう、俺は守ることができない。

 …ずっと友達で。ずっと、俺を助けてくれた。

 いつも俺のわがままを聞いてくれて、その度に頑張ってくれた。

 なのに、なのに…


「クレイグ」

 俺が叫ぶと、遠くに聞こえていた足音が止まった。

「場所の見当はついているのか?」

「…ついてないけど?」

 俺はクレイグの横まで走った。


「一緒に行く。ごめん。俺のわがままばっか言って」

 すると、彼は前髪で隠れた目をきらりと光らせた。

「最初からそういえば良かったんだよ。頭でっかち」

「…すまない」

 ふっと笑うと、クレイグは俺の髪の毛をかき回した。…親父みたいなことすんなよ。


「行くぞ、アンドリュー。絶対助けよう」



「どこに行ってんだ?」

「秘密通路。真っ暗だったし、牢獄がないなら、絶対あそこだ」

 あの時、秘密通路に骨になった人間がいた。もし、クレイグの理論が正しいのならば、人間を狩り過ぎた時、保管期間が長過ぎて飢え死にした。と考えると筋が通る。

 今でも場所を変えていなかったら、きっとあそこに…


「ここだっけ…?」

 すっと壁を動かすと、秘密通路が現れた。よし、ビンゴ!


「行くぞ、クレイグ」

「おう」

 彼は腰に下げていたランプを取り出し、火を灯す。真っ暗な奥にかざしてみると、あの時と同じ階段が現れる。


「ここの奥に、食料庫がある。そこに、俺たちの街に通じる地下通路があるんだ。だから、食料庫に行ったら、俺たちの勝ちだ」

「了解」

 俺たちは、ゆっくりと道を進む。仕掛けにはまらないように、気をつけながら。


「アンドリューと、クレイグです!返事してください!」

 俺が叫ぶと、もごもごと何かを言う声が聞こえた。…居る!

「落ち着けよ。落ち着いて行くぞ…」

 やっとのこっさで、俺たちは先輩達のところについた。口に猿ぐつわをつけられている。


「今、取りますね」

「クレイグ。さっさと取れ。俺は見張りをする」

「…ああ」

 …気づいているみたいだ。誰かいる。背筋に視線を感じる。何かがいる。しかも、強敵…


 ガサッ。


「誰だ!」

「あ、アンドリューか?」

 …え?

 も、もしかして…


「アレクさん?」

「おせーよ、来るのが」

 呆れた声で、彼はため息をする。


「この城、ダンジョンなんだから、さっさと助けに来いよー」

「いや。知らないっすよ…」

 つか、いつからこの城に迷いこんだんだ…

 さすが、強運と方向オンチがかけ合わさったような人間。


 …ゾクリ。


 ハッとして、俺たちは身構える。

「クレイグ…早くしろ」

「わかってるよ!」

 違う。全く違う!

 アレクさんとは全く違う…殺気。これは…


「「人間じゃない」」

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