52.友達だからって、甘えるな
…ふざけやがって!
「俺はサタン達を追いかける。クレイグは先輩達を…」
「おい、待て。お前、一人で奴らを討つつもりか!?」
クレイグが俺に掴みかかった。珍しく、彼の目が血走っている。
「…これは、俺が倒すって決めたんだ。邪魔すんな」
「さっき、先輩の命を優先するって、決めたよな?」
彼のセリフに、俺はハッとした。自分の体温が異常に高かったことに、今更気付く。
俺は、目をそらし、ぼそりと呟いた。
「…ほっといてくれ」
パシン。
広い部屋に、高い音が鳴り響いた。俺の髪から汗が落ちる。…こんなに汗かいてたっけ?
「命を無駄にする奴と友達になった覚えはない」
俺は、思わずぞっとした。クレイグの殺気。でも、いつものとは違う。
汚いものを見るような…とてつもなく、冷たい視線。
「俺、一人で助けに行く。サタン達は諦めるから」
「…」
「アンドリューは、殉職したことにしてやる。感謝しろ」
彼は、俺の足を思いっきり蹴った後、スタスタと奥に消えていった。…さっき、見たあの背中。もう、俺は守ることができない。
…ずっと友達で。ずっと、俺を助けてくれた。
いつも俺のわがままを聞いてくれて、その度に頑張ってくれた。
なのに、なのに…
「クレイグ」
俺が叫ぶと、遠くに聞こえていた足音が止まった。
「場所の見当はついているのか?」
「…ついてないけど?」
俺はクレイグの横まで走った。
「一緒に行く。ごめん。俺のわがままばっか言って」
すると、彼は前髪で隠れた目をきらりと光らせた。
「最初からそういえば良かったんだよ。頭でっかち」
「…すまない」
ふっと笑うと、クレイグは俺の髪の毛をかき回した。…親父みたいなことすんなよ。
「行くぞ、アンドリュー。絶対助けよう」
「どこに行ってんだ?」
「秘密通路。真っ暗だったし、牢獄がないなら、絶対あそこだ」
あの時、秘密通路に骨になった人間がいた。もし、クレイグの理論が正しいのならば、人間を狩り過ぎた時、保管期間が長過ぎて飢え死にした。と考えると筋が通る。
今でも場所を変えていなかったら、きっとあそこに…
「ここだっけ…?」
すっと壁を動かすと、秘密通路が現れた。よし、ビンゴ!
「行くぞ、クレイグ」
「おう」
彼は腰に下げていたランプを取り出し、火を灯す。真っ暗な奥にかざしてみると、あの時と同じ階段が現れる。
「ここの奥に、食料庫がある。そこに、俺たちの街に通じる地下通路があるんだ。だから、食料庫に行ったら、俺たちの勝ちだ」
「了解」
俺たちは、ゆっくりと道を進む。仕掛けにはまらないように、気をつけながら。
「アンドリューと、クレイグです!返事してください!」
俺が叫ぶと、もごもごと何かを言う声が聞こえた。…居る!
「落ち着けよ。落ち着いて行くぞ…」
やっとのこっさで、俺たちは先輩達のところについた。口に猿ぐつわをつけられている。
「今、取りますね」
「クレイグ。さっさと取れ。俺は見張りをする」
「…ああ」
…気づいているみたいだ。誰かいる。背筋に視線を感じる。何かがいる。しかも、強敵…
ガサッ。
「誰だ!」
「あ、アンドリューか?」
…え?
も、もしかして…
「アレクさん?」
「おせーよ、来るのが」
呆れた声で、彼はため息をする。
「この城、ダンジョンなんだから、さっさと助けに来いよー」
「いや。知らないっすよ…」
つか、いつからこの城に迷いこんだんだ…
さすが、強運と方向オンチがかけ合わさったような人間。
…ゾクリ。
ハッとして、俺たちは身構える。
「クレイグ…早くしろ」
「わかってるよ!」
違う。全く違う!
アレクさんとは全く違う…殺気。これは…
「「人間じゃない」」




