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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
すれ違い 〜アンドリューサイド〜
50/97

50.人質争奪戦

 木で作られた道を、俺たちはゆっくりとすすむ。両方とも警戒しているが、道はとても遠い。精神が持つ気がしない。


「なあ。このデスゲーム、どう思う?」

 俺が質問すると、クレイグはすっと彼の顎をなでた。

「ずっと気になってたことがあるんだ」

「何?」

 彼は少し息を吐くと、ゆっくりと喋りだした。


「…もうすでに消えた人間=もうすでに死んだ。と考えていいのか、ということだ」

「え…?」

 すると、クレイグは俺の前で後ろ歩きを始めた。


「バンパイアの一般論は知らない。だが、こちら側のこじつけで話を進めると、食材の人間を簡単に殺すのは、あまり勧められる話じゃない」

「…どういうことだ?」

「つまりだ!」

 彼の声が、森を反響する。


「新鮮な状態。つまり、生きている状態で、まだどこかにいるんじゃないか?」

「…え?」

 …きっと、きっとそうだ!

 人間は、先ほどまで生きていた魚を好む。それと同じで、バンパイアも先ほどまで生きていた人間を…

 そして、奴ならするだろう。サタンなら、そんな駆け引きをするだろう。


「これ…人質争奪戦になるんじゃないか?」

 そう尋ねても、彼は頭を動かさない。

 ただ、俺の前をスタスタと歩いてくれている。



 …また、この門をくぐるとはな。

 恐ろしくも美しい装飾に、俺の鼓動は上昇する。

 俺はクレイグと一緒に城の大きな扉まで走っていく。

 到着すると、俺たちは背中をぴったりと扉につける。…って、あれ?この違和感…


「クレイグ!」

 彼を突き飛ばした瞬間、背中で木が壊れる音がした。ぞっとしながら後ろを振り向くと、たくさんの剣。これって、まさか…

「先輩達の剣だ…」

 銃士隊はみんな同じ装飾の剣を持つ。これ程の数の剣があるってことは…やっぱりここにいるんだろう。


「十七本ある」

「十七…」

 二十人中、二人は俺たち。あとの一人は…きっとアレクさんだろう。あの人が負ける訳ない。

 俺は、真剣な顔で、奥にある巨大な階段を見つめる。それは、まるで今から会う敵を表しているようだった。


「階段だって、必ず終わりがある。終わりがなかったら、それは階段じゃないよ」

 隣で彼はくすりと笑う。余裕の笑み。そして、顎を少し引いて、鷹のように睨みつける。クレイグ特有の殺気。これは、面白いゲームになりそうだ。

 俺も彼のような殺気を出してみる。


「このケンカ、買おうか」

「もちろん」

 …こいつ、最初から決めていたな?

 俺たちは、同時に戦場に歩み出す。



 一歩一歩、気を引き締めて歩いていく。いつか、ぷつんと集中が切れそうで、怖い。

「先に決めよう」

 俺はコインをクレイグに見せる。


「先輩の命か、バンパイア討伐か」

 すると、彼は一瞬でコインを奪う。一瞬の微笑の後、すぐに冷たい表情になる。その顔は、厳しい冬の寒さを連想させる。

 …やっぱり、二分の一にたくさんの命をかけるのは、あまりにも無責任。あまりにも非常だ。

 前を行くクレイグの背中は、かなりたくましかった。


「緊急事態だ。助けられる命を優先させよう」

「了解」

 俺はゆっくりと足を地面に置くと、すぐに離した。…これ、動くぞ。


「分かっている罠に、わざと引っかかってみるのは?」

「ファンタスティックだね」

 クレイグの目を見ながら、だんだん体重をかけていく。


 ガコン。


「…右足、埋まった」

「は!?」

「すぐに抜けるさ。それより…今からの敵だね」

 目の前に、黒の大群が押し寄せてくる。カラスだ。


「クレイグ。背中、頼む」

「いや。頼まなくてもいいみたいだ」

「は!?」

 背中から歯ぎしりと、鼻で笑う声がした。


「こいつら…お前さんには興味ゼロみたいだ」

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