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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
すれ違い 〜アンドリューサイド〜
48/97

48.デスゲームの始まり

 真っ黒な森の中、俺たちは耳をそばだてて歩いていく。

 先頭はもちろんアレクさん。その後に何人かの仲間が歩き、最後尾に俺とクレイグ。

 後ろに何かいる…そんな気しかしない。


「気を張りすぎだ。それじゃあ、大事な時にぶっ倒れるぜ?」

「…うっせえ」

 彼は肩をすくめると、俺より一歩後ろを歩きだす。


「何をしたいんだ?」

「んー?こうしたら、少しはお前も楽になるかな?って」

「なんねーよ。ばーか」

 こいつ…わかってやってるよ。どうせ変わらねーのに、こんなことして。


「帰ってサラに言うことあるんだろ?なら、生き残る行動をしろ。そのままじゃ、死ぬ」

 …そうかもしれない。今、緊張感で疲れてしまったら、この先バンパイアに出会った時、倒せる自信がない。

 特に、サタン。そして、あの女。奴らの魔術をあなどってはいけないだろう。


「肩凝った。多分、寝違えた」

「はいはい」

 クレイグが俺の肩をもむ。

「おじーちゃん、だいじょーぶ?」

 …おじーちゃんじゃねーよ。



 デジャビュ。というのか。

 この森に見覚えがある。シャーロット探しのために出かけた時、迷ってしまった森。結局、サラと出会ったおかげでなんとかなったが、こりゃ難題の迷路だ。

 アレクさんは地図も、羅針盤も持たずに先頭を進む。…さすが、熟練の剣士…というのか。それとも、ヤマカン大魔王…?

「後者の方が、可能性が高い」

「うん。俺もそう…」

 思っ!?!?


「な、何で!?」

「ん?声に出ていたぞ?」

「なっ!?」

 一瞬でアレクさんの方を向く。しかし、例の彼は、ガキンチョのように無邪気に歩いている。片手に草を持って。

「「…ばかだ」」

 …聞こえてないよ。

 お年を召したのか。


 ガサッ。


 その音に、全員が背中合わせになった。アレクさんだけ動かなかったが、目つきが完全に変わっている。

「レディース・アーンド・ジェントルマン…」

 その不気味な声が、耳に入っていく。それは、クレイグの楽しそうな言い回しとは違い、暗闇に飲み込まれるような、気色の悪い声。

 そして、その声に聞き覚えがあった。


「奴だ…サタンだっ…!」

「ああ、レディーはいないか…残念だな。きっと、連れて来ると思ったんだけど」

 ここは敵地なんだぜ?いくらなんでも、そんなことするわけ…


「なっ…!?」

 地面に、空洞ができる。真っ暗な…空洞が。

「アンドリュー!」

 わかってるよ!

 俺は腰に着けていたロープを木の枝まで投げる。端に付けていた金具が木に引っかかると、俺はクレイグに手を伸ばす。

「飛べ!」

 振り子の要領で、ターザンのように空を舞う。

 空洞の範囲は、俺たちがいた部分までで済んだ。距離を取って地面に着地する。


「番号!」

 アレクさんの叫びに、先輩たちが答えていく。俺たちも答えると、彼は小さく舌打ちをした。

「四人…死んだ」

 俺は歯が砕けそうな強さで、歯ぎしりをする。ここで人数減らすってか?卑怯な奴らめ…


「さあ…楽しい楽しいデスゲームのスタートだよ」

 恐ろしいアナウンスが、森中に響きわたる。

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