48.デスゲームの始まり
真っ黒な森の中、俺たちは耳をそばだてて歩いていく。
先頭はもちろんアレクさん。その後に何人かの仲間が歩き、最後尾に俺とクレイグ。
後ろに何かいる…そんな気しかしない。
「気を張りすぎだ。それじゃあ、大事な時にぶっ倒れるぜ?」
「…うっせえ」
彼は肩をすくめると、俺より一歩後ろを歩きだす。
「何をしたいんだ?」
「んー?こうしたら、少しはお前も楽になるかな?って」
「なんねーよ。ばーか」
こいつ…わかってやってるよ。どうせ変わらねーのに、こんなことして。
「帰ってサラに言うことあるんだろ?なら、生き残る行動をしろ。そのままじゃ、死ぬ」
…そうかもしれない。今、緊張感で疲れてしまったら、この先バンパイアに出会った時、倒せる自信がない。
特に、サタン。そして、あの女。奴らの魔術をあなどってはいけないだろう。
「肩凝った。多分、寝違えた」
「はいはい」
クレイグが俺の肩をもむ。
「おじーちゃん、だいじょーぶ?」
…おじーちゃんじゃねーよ。
デジャビュ。というのか。
この森に見覚えがある。シャーロット探しのために出かけた時、迷ってしまった森。結局、サラと出会ったおかげでなんとかなったが、こりゃ難題の迷路だ。
アレクさんは地図も、羅針盤も持たずに先頭を進む。…さすが、熟練の剣士…というのか。それとも、ヤマカン大魔王…?
「後者の方が、可能性が高い」
「うん。俺もそう…」
思っ!?!?
「な、何で!?」
「ん?声に出ていたぞ?」
「なっ!?」
一瞬でアレクさんの方を向く。しかし、例の彼は、ガキンチョのように無邪気に歩いている。片手に草を持って。
「「…ばかだ」」
…聞こえてないよ。
お年を召したのか。
ガサッ。
その音に、全員が背中合わせになった。アレクさんだけ動かなかったが、目つきが完全に変わっている。
「レディース・アーンド・ジェントルマン…」
その不気味な声が、耳に入っていく。それは、クレイグの楽しそうな言い回しとは違い、暗闇に飲み込まれるような、気色の悪い声。
そして、その声に聞き覚えがあった。
「奴だ…サタンだっ…!」
「ああ、レディーはいないか…残念だな。きっと、連れて来ると思ったんだけど」
ここは敵地なんだぜ?いくらなんでも、そんなことするわけ…
「なっ…!?」
地面に、空洞ができる。真っ暗な…空洞が。
「アンドリュー!」
わかってるよ!
俺は腰に着けていたロープを木の枝まで投げる。端に付けていた金具が木に引っかかると、俺はクレイグに手を伸ばす。
「飛べ!」
振り子の要領で、ターザンのように空を舞う。
空洞の範囲は、俺たちがいた部分までで済んだ。距離を取って地面に着地する。
「番号!」
アレクさんの叫びに、先輩たちが答えていく。俺たちも答えると、彼は小さく舌打ちをした。
「四人…死んだ」
俺は歯が砕けそうな強さで、歯ぎしりをする。ここで人数減らすってか?卑怯な奴らめ…
「さあ…楽しい楽しいデスゲームのスタートだよ」
恐ろしいアナウンスが、森中に響きわたる。




