45.Do you know him?
サラが指定した場所は、あの丘の上。時間は、夕暮れ時。星を見たいのかな?それとも、ロマンチックな演出…なわけない。
ちょっと嫌だったけど、アレクさんは『期待するな』と口を酸っぱくさせて言ってた。
これは、アレクさんの長年の経験からの推測か。それとも、サラから何か聞いているのか。
まあ、どちらにせよ、俺が丘に向かうことは変わりない。
私は昼頃からずっと、丘の大きな木の根本で寝ていた。
昨日、アレクさんと話した後、私はずっと頭の中がぐるぐるしていて、まともな行動をすることが出来なかった。その行動の中には睡眠も入っていて、昨日寝れなかった分を、アンドリューがやって来る前に済ませておこうと思ったのだ。
…なんてこと言うけど、ただ単に丘の空気や原っぱが素敵だった、の理由の方が大きい。きっと、睡眠不足じゃなくても寝ていたわ。
「サラ。起きてる?」
アンドリューの声で、私は目を覚ました。でも、なんとなく起きたくなくって、寝返りを打つ。
「呼び出しといて、何してるんだか…」
そっとアンドリューは私の横に座る。ほんの少し、彼のぬくもりを感じた。何かを私の上にかけてくれた。なんだろう…多分、あの緑の服よね。
そんなアンドリューが横にいることを知りながら、私は悲しい想像をしてしまう。
…もし、私の推理が正しかったら…どうしよう?もし、もし…
「狸寝入りはやめたらどうだ?」
彼にデコピンをされて、思わず声を出してしまった。
「痛いよ!」
「本題に入れ。俺は忙しいんだ」
そうやって催促するが、彼は優しい笑顔を浮かべている。この横顔をずっと見ていたい…だなんて。変なこと考えるわね。
「今から私、大事な話をするわ。だから、私がアンドリューに質問するまで、しばらく黙っててくれない?」
「おいおい。きついこと言うなあ」
「いいでしょ。たまには」
私は息を全て吐くと、太陽が沈むのを待って話し始めた。
「…アンドリューのお父さん、昔、バンパイア討伐に行ったんでしょ?それも一人で。そして、戻らなかった。でも、本当に戻らなかったのか…」
私は真っ暗な世界の中で、あまり真面目に目を凝らさずにアンドリューを見た。
「それは、都に帰ってこなかったから?それとも…人間の姿ではなかったから?」
「…」
「ああ。まだ答えなくてもいいわ。私の推理を聞いて、その答えを聞いてほしいの。あのね。アンドリューのお父さん…ビルさんは…」
私は言葉を選ぶことができなかった。
これは、ちゃんと…いや、遠回しに言うのはよそう。
「バンパイアになっちゃったんじゃない?」
…こいつは、天然お嬢様。
でも、あの切れるロザリーの友達なんだ。もしかして、意外と…賢いやつかもしれない。
「そして、ビルさんが行方不明になった後、バンパイア荒らしが起こった。それも、アンドリューの街で…ねえ。もしかして」
彼女は一瞬言葉を切ると、まぶたをすっと開いて重々しく言った。
「バンパイアになったビルさんが、アンドリューのお母さんを殺したんじゃない?」
…見事だよ。お嬢様。
「正解だ」
俺は不敵な笑みを浮かべたつもりだが、彼女は心配そうな顔をしている。
「でも、もう少し深く答えてくれたら嬉しいな。あと一歩、なんだけど」
すると、彼女は迷ったように目を泳がせた後、俺の顔を正面から見た。
「まさか…」
「大ヒーント!」
俺が少し鼻で笑うと、サラは口を震わせた。…ここまで知ったら、もう引き返せないぜ。
「俺が初めてバンパイアを殺したのは、五歳の頃だ」




