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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
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44/97

44.親父

「ば、バンパイア討伐!?」

「うん。行ってくるねー」

 ロザリーの口が、中途半端に開いている。唖然の模範解答ね…

 一方、討伐組のクレイグは、そのままピースをするくらい、気楽なテンション。腕はいいけど…


「こんなに気楽でいいの?」

「よくねーけど、ロザリーの前で心配させちゃいけないだろ?」

「まあ、そうだけど…」

 アンドリューだって、気楽なくせに…と、私は膨れてみせる。彼は強いけど…正直言って、バンパイア相手では勝てる可能性は低い。もうすでに何人かと手合わせしたはずだけど、戦いの後に『勝ちました』と、言ったことはない。

 だから、私はバンパイア討伐に行って欲しくなかった。


「アンドリュー。バンパイア討伐って、何人で行くの?」

「ん?ああ。大体、二十人ぐらい?それが、どうかした?」

「ううん…別に…」

 …別に、じゃないでしょ!私は聞きたい事を、うまく聞くことができない。


「アンドリュー達は、いつ討伐に…?」

「三日後。唐突過ぎるだろ?」

 アンドリューは不満そうな内容の言葉を発したが、声は少し弾んでいる。

 その理由が私の予想通りかもしれない…と思うと、声をかける勇気も出なかった。


「どうかした?サラ」

 彼の声にハッとすると、私は右下に目を逸らした。

「後で、二人で話したいことがあるの。いい?」

 すると、アンドリューの顔が真っ赤に染まる。少し顔を隠しながら、ぼそっと「いいよ」と返す。

 …ちゃんと、聞かなきゃ。

 多分、このことは、ちゃんと知らないといけない。



「指輪を用意しろ!」

「いやいや、それはねーよ!」

「馬鹿野郎!タイミング的に…」

「だから、それはない!」

 …相変わらず、クレイグは俺の思った通りに言いやがる。

 俺とクレイグは、銃士隊の稽古の合間に小声で話していた。

 男が死ぬ可能性がある戦いに出る前に、女が大事な話をしたがる…これは、引き止めるとしか思えない。あわよくば…って何考えてんだ。


「好きって言いたいのか?」

「…!?」

 こいつ…察しすぎてホラーだ。長年仲良くしてきた俺たちだが…さすがにホラーだ。

「なんで、そんなことを言わないといけない?サラは俺にそう言われたいから、呼び出したのか?」

「さて。どうかな?」

 クレイグの不敵な笑顔に、俺はあきれる。こんな顔ができるなら、もっとロザリーを大切にしたらどうだ?


「アンドリュー」

 きりっとした男の声が、俺の頭の上からした。


「アレクさん!」

「アンドリュー。期待するな。彼女はそんな話をするわけない」

 アレクさんの冷たい声に、俺は少しイラッとしてしまった。

「そんなことありません!サラは、俺のこと…」

 …どう思っているんだ?彼女は俺の…ことを?


「サラはお前のことを好いているだろう。しかし、それと今回の話は関係ないだろう。とにかく、ちゃんと答えることだな」

「ご忠告、どーも」

 すると、アレクさんが俺に向かって睨みつけた。…殺気の量ひでー。

 俺は心の中で舌打をした後、「…すみません」と、気持ちの欠片もない声で謝る。

 すると、彼は俺の配慮なしに、わざとらしく舌打をする。

 …なんなんだよ、こいつ。うっぜ。


「親父みたいか?」

「…は?」

 …お、親父?

 俺は、薄い記憶から、親父の姿を思い浮かべる。大きな背中や、無駄にでかい筋肉。だが、どんなことを言っていたか、どんな雰囲気だったか…全く記憶にない。


「俺は、ビルの友だった。だから、アンドリュー。君のことを、自分の息子のように思っている」

「…」

「だから、口うるさいと思うが、ちゃんと聞いてくれ。俺が言うのはおかしいが、俺をビルと思ってくれ」

 …あっそ。

 うざいのに、なんだか嬉しい。

 多分、このイライラは歯がゆさから…嬉しすぎて歯がゆいからだろう。

 …こんな風に親父みたいな人に褒められると、本気で困るよ。

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