表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
都へ
43/97

43.嘘と真実

 嘘だ。

 あとになって、私はやっと思い出した。そしてやっぱり、悲しかった。


『あいつの親父、持病でさ』

『…二人共、バンパイアに殺されたんだ』


 アンドリューとクレイグ。どちらかが嘘をついている。

 彼の両親は、どんな理由で死んだんだろう…

 こんな不謹慎なこと、知るべきじゃない。でも、知らないといけない。そんな気がしていた。



「俺に聞いたところで何も出ないぞ」

「いいえ。私を舐めないでください?」

 私はにやりと笑うと、アレクさん肩をすくめたあと、また剣の稽古を始めた。

 他の銃士隊員は昼ご飯を取ったり、休憩したり…とにかく、人が近くにいない。なのに、アレクさんはご飯を食べる様子は全くない。いつも、みんなのいないところで稽古をしている、努力を見せたくないタイプ…恥ずかしがり屋さんなのね。


「今、何か失礼なことを考えたか?」

「正解だけど、大事な話を脱線させないでくださる?」

「はいよ」

 シュッと剣の風が吹く。とても強い突き。彼の汗で、髪が張り付いている。


「アンドリューのお父さんのこと、知ってるでしょ?」

「だから、知らないって」

「アレクさんの年齢から考えて、知っているはずですよ」

「…っ!」

 アレクさんは私に剣を向けた。彼の肩は上下に動き、顔を真っ赤にさせ、動揺の色を隠せないでいる。


「そんなこと、聞いてどうする?」

「アンドリュー、またはクレイグがどうして嘘をついたのか、ちゃんと知りたいんです。アンドリューの両親の死に、何か悪いことがあったのですか?」

「…あった、だろうか」

 アレクさんの動きがすっと止まった。そして、重い顔をしながら、ゆっくりと手を下ろしていく。


「一度しか言わねーぞ。よく聞け」

 彼の台詞で、私は身を乗り出した。

 アレクさんはなめらかな動きで、剣を鞘に収める。

「アンドリューの父は、俺の戦友だ。そう、奴の名は…ビル」



「ビルはアンドリューと似た、赤茶色の髪を持っていた。俺よりも強くって、本気で羨み、本気で越そうとしていた」

 まあ、ちょっと先輩だったから、無理だったかもしれないけど。と、彼は付け足す。

 その目はいつものきりりとしたアレクさんではなく、また、ちゃらんぽらんなアレクさんの目でもなかった。まるで、孫を見るおじいさんのような…

 そんな連想をした瞬間、私はハッとした。アレクさんの目元のシワに。

 なんだか、ちょっとだけ寂しくなってしまった。


「俺の先輩だったビルは、反抗期だった俺をよく育ててくれた。俺は銃士隊の二番手。つまり、ビルが一番手だったんだ。とても強かった。本当に…」

 その言葉を聞いて、私は顔を下げた。だめだよ。ちゃんと聞かなきゃ…

 だけど、私の頭が重くって、全く動かなくなってしまった。


「しかしビルは、はぐれ者というのか…一匹オオカミというのか…とにかく、皆の輪に入ることを嫌う人間だった。その様子を見て、俺たちの上の人間が、ビルのことを嫌うようになってしまった。そして、ある日」

 アレクさんは言葉を止めた。一度ため息をしたあと、一気に息を吸って言った。


「たった一人で、バンパイア討伐に行かされた」


 私は顔を上げたあと、大きく目を見開き、小さな悲鳴をあげる。

 たった一人で…?

 私は、サタンやルシフェル伯爵。そして、おふざけ仮面女のバンパイアを連想した。…あんなに強いバンパイアがいるのに!?

 いくらアレクさんより強いとしても、あの三人…いいえ。もっといるわ。そのバンパイア達を一人でだなんて…


「このことが、何を示すかわかるか?」

 …ビル。アンドリューのお父さんの、死。

「わかったのならば、早く帰れ。もう直ぐ昼休みが終わる」

「じゃあ、アンドリューのお母さんは!?どうして!」

「あと一つ、君にヒントをやる」

 アレクさんは私に背を向け、剣を太陽を刺すように、グッと空に向けて突きをした。


「アンドリューの母は、ビルがバンパイア討伐に行った数日後、バンパイアに殺されたらしい」

 私は気がついた。気がついて…しまったのかもしれない。

「バンパイアが街にやってきて、無差別に血を吸うことを、俗称」


「「バンパイア荒らし」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ