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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
都へ
40/97

40.何者

「…っ!」

 嘘だろ!?

 謎の女は、俺の攻撃をスルリとかわしながら笑い声を上げている。なのに、息も上がってない。

 …俺は、もうそろそろ倒れそうなのに。

 ぐっと心臓の辺りを掴む。必死に息をすると、俺はバンパイアから距離を取った。


「オディール殿と共に逃げるべきだったな」

「…くそっ」

 どうしたら、こいつに…こいつにっ…!

 ふと顔を上げると、彼女は、宙に短剣を投げて遊んでいた。月の光に、剣が反射する。…ふざけやがって。


 こんな時、クレイグなら…クレイグ…なら?

 …そうか!

 俺は肺の中にめいいっぱい空気を入れると、目を閉じて、思いっきり剣を後ろに放り投げた。

 剣が地面に突き刺さる音がした。


「戦意喪失…か?」

 奴の言葉を無視して、俺はカッと目を見開く。

 敵が不敵に笑うと、一瞬で間を詰めて、攻撃してきた。

 両手に持っている短剣は、俺の心臓や脳天を狙って来るが、剣を捨てた俺は身軽だから全部避けきってる。


 …しかし、このままだと、攻撃が出来ない。バンパイアの体力がどれほどかは知らないが、俺の体力は限界が見え始めている。

 バンパイアの動きがのろくなった瞬間、俺はバク転の要領で、足を使って片手の短剣を弾いた。ハッと敵が焦った瞬間、俺は短剣を拾い、奴の首に刃先を向ける。


「焦ったところで、もう遅い」

 俺は左手を使って相手の腕を拘束し、背負い投げをして気を失わせた。

 俺は、女だろうが男だろうがバンパイアは殺す。天国に…いや、こいつは地獄か…そこに送ってやるのが、俺のポリシーだ。


「面白い戦いだった」

 送る前に敵の顔を拝もうと、俺は仮面に手を掛けた。…あれ?

「と、取れない!?」

 俺が思いっきり引っ張っても、びくともしない。ただただ、顔がくっついて…なんだこれ?

「お前には、外せないさ…」

「なっ…!」

 奴は知らない間に、意識を取り戻していた。

 俺は一瞬で短剣に持ち替え、敵の喉元に向けた。

「うわっ!」


 急に、奴の体から、無数の真っ黒なコウモリが湧き出てきた。俺は、近づいて殺そうとするが、コウモリのバリアーのせいで、前に進めない。

「お、お前…!」

「今回は、オディール殿のことは諦めよう。だが、次は…」

「…っ!待てっ!」


 本当に、これは現実なのか?

 真っ暗闇に消えていく女を、俺は凝視する。

 何者だったんだ…

 あのバンパイア、サタンの手下なのか…?

 あ…!


「サラ!」



 私はやっと丘についた。とても綺麗な星…まるで、真っ暗だけどキラキラ光る、海の中に沈んでしまったみたい…

 だなんて。

 私、海なんて行ったことないじゃない。ああ…どんなところなのかな?きっと、私が考え以上に素敵な場所でしょうね…


「綺麗なところだよ。冷たくて、とっても気持ちがいい。あ、結構しょっぱいけどね」

「アンドリュー!」

 私は驚いて後ろを振り返った。


「大丈夫だった?ケガは?」

「大丈夫。このくらい、楽勝…と言いたいところだけど、逃しちまった。ごめんな」

「ううん。私はアンドリューが無事なだけで、十分…」

 彼は、何かに思いをはせるように、空を眺めていた。

「ねえ。サラ。子供の頃のこと、覚えていない?」

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