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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
都へ
36/97

36.嘘と言って

 その冷たい風を、アンドリューとロザリーも感じ取ったらしい。クレイグも、酔いながらも、フラフラと起き上がった。

「奴らだ」

 アンドリューが呟くと、階段を駆け下りて行った。私もつられて行こうとしたが、一瞬止まった。

「ロ…」

「早く行ってください!」

 彼女は血相を変えて、クレイグのために、コップに水を入れた。

 私は一瞬はばかったが、すぐに気を引き締めて階段を下りた。


「アレクさん…」

 下の部屋に行くと、アンドリューがアレクさんに詰め寄っていた。一方、アレクさんはさっきまでの酒飲み男とは違い、真剣な目で正面を見つめていた。

「理性の無いタイプのバンパイアだ。久しぶりに来たな…」

 アレクがそうつぶやくと、赤い舌をチロリとみせた。獲物を狙う蛇のようで、少し怖かった。

「理性のないタイプ…?」

 アンドリューがつぶやくと、だんだん彼の顔が真っ青になっていた。何かを思い出したのだろうか?彼は寒そうに腕をさすり始めた。

「理性があるやつの方が手こずる。人数は多いが、これはラッキーと思うべきだ」

 そう言うと、アレクさんがのっそりと立ち上がった。それはまるで、冬眠から凶暴なクマが起きてしまったような…そんな貫禄が、まだ若いはずの彼のオーラから見えていた。

 すると、アレクさんは私の方を向いた。


「お嬢さんは、ここから出るな。絶対だ」

 そう言った後に私の肩をたたくと、身支度を始めた。

「サラ。これ…」

 すると、アンドリューは私に彼の大切なペンダントを渡した。


「これ…持ってて」

「ダメよ、アンドリュー!あなたの大切なペンダントだし、これを持っていたら…」

「サラ。それは違う。俺はやつらを消さないといけない。逃げてもらっちゃ困るんだ。わかったか?」

 私はそっと彼の宝物を持つ。そして、彼はそっと私の手を握った。

「待ってろ」

 アンドリューが真剣な目で頷き、勢いよく出て行った。



「アレクさん。どうやれば、倒せますか?」

「首を切るだけだ」

「…」

 さすが、フィーリング系剣士。これが精一杯の説明なんだろう。


 ため息をついたら、クレイグが歯ぎしりしながら外に出てきた。

「バンパイアはどこだ!?」

「…来る」

 アレクさんが呟くと、その時には近くまでやって来ていた。

 …っ!

 切る…切ってやる!



 ロザリーが窓から声を張り上げた。

「も、もしかして、これ…」

 私も窓に近寄ると、私はあっけにとられて、口を押さえていた。

 …誰か、嘘と言って?

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