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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
都へ
35/97

35.作戦会議II

「作戦会議、セカンドシーズン!」

 …?

 クレイグ…!?

 今、やっと気づきました。彼の頬が、少しばかり赤く染まっているのを…飲んだね。この人。

 そして、話題提供した張本人が、もうウトウトし始めた。


「サラ様。この人寝かしておくんで、先話しておいてください」

「おい、ロザリー。一人で男を連れてくだなんて…」

「出来ますよ」

 すると、彼女はクレイグの靴を取って、彼の鼻に近づけた。

「くっさ!」

 クレイグが寝言でそう叫ぶと、二歩後ろに下がった。…進行方向とは反対から靴を近づける作戦ね。


「あいつらは、ほっとこう。俺はクレイグと、サラはロザリーと今日一緒にいたから、足りない部分は少ないはずだ」

「そうね」


 私達は、小さな丸机を囲んだ。彼は、パッと地図を広げる。

「多分だけど、あの城はここにあるはずなんだ」

 アンドリューがぐるりと丸をつける。それは、地図の端っこの端っこで、はみ出して机にペンの赤がついたぐらい。

 私は道中で寝ていたが、アンドリューが言っていることは正解だと思う。秘密通路を使って街に行った時、井戸までただただまっすぐに歩いた覚えがある。これで合っているはず。

「バンパイアは、日中に行動が出来ない。となると、さほど近くまでは来ていない…と考えるのが妥当だ」

「でも…」

「どこから狼が湧いてきたか。だろ?わかってる…」

 すると、アンドリューが重い顔で私を見つめた。


「伯爵や…サタンの魔力はどのくらいだ?」

「サタンに関しては、アンドリューの方がわかっているんじゃない?」

 私がそう尋ねると、彼は顔を伏せる。強かった。だから、何も言えないみたいだ。

「ルシフェル伯爵ね、言ってたの。カラスを操っているとわかっているなら、どれほどの力量かわかるはずだって。もしかして、遠い距離でも魔術を使えるかもしれない…」

「そうか」

 彼は消え入りそうな声で呟く。

 わかってるよ…わかってる。

 ルシフェル伯爵達が、百パーセント近くにいないとは言えない。それに、魔術でこっちにもう来ているかも…何もかもが恐ろしい。


「そっちはどうだった?」

「…そうね」

 私は、分厚い本を開いた。バンパイアのことについて、全然書いていなかった。でも、少しの知識でも、何か変わるかもしれない。

「バンパイアは、十字架を見ると、自分の罪深きを思い出して、自責の念に駆られるんだって。だから、それをドアに飾っておけば、なんとかなると思うわ」

「もしかして…」

 そうアンドリューが呟くと、彼のペンダントを服の中から出した。


「これのおかげで、動物達は逃げたのかもしれない…」

「え?」

 私は彼と一緒にペンダントを覗いた。十字架とロケット…十字架!?

「完全に忘れていた。十字架は、バンパイアが避けるんだった…!」

「でも、待って。アンドリューは、伯爵達と戦ったんじゃ…」

「あの時は、危なくないように外していたんだ。だし…これは、大切なものだから」

 アンドリューが優しい顔で、ペンダントを見つめる。この前も、こんな目をしていた。大切なものなんだろうな…


「そして、銀の武器に弱いんだよ。それ、銀なの?」

「ああ。この前、全然攻撃できなかったから意味がなかったけど、訓練すれば、いつか必ず…」

 アンドリューはぐっと剣の柄を握りしめる。重々しく息を吐くと、ゆっくり目を閉じる。そのまま彼は息を吸わず、肩を上げる。彼の顔はだんだん赤くなり、顔が険しくなっていく。

 心配した私は、彼の手を握った。


「アンドリュー。きっとできるわ。アレクさんに稽古をつけて貰えば、きっと、きっと…」

「…ありがとう」

 彼がそう言うと、弱々しく笑った。

 その時だ。あの冷たい風がやって来た。鳥肌が立つ、あの風が。

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