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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
都へ
33/97

33.作戦会議

 部屋に入ると、優しい花の香りがした。あの花瓶に飾ってある、紫色のやつかな?とても、いい匂い。

 窓際には、ふかふかの二段ベッドが二セット分。みんな、仲良く寝れるわね。


「こんにちは。お部屋を借りたいのは、君たちかい?」

 その声に振り返ると、優しそうなおじさんが立っていた。手には、四人分の紅茶が用意されている。

 アンドリューが前に進み、片手を差し出した。


「ああ。そうです。俺の名はアンドリュー」

「ジョニーと言います」

 二人は握手をし、ジョニーは紅茶を机に置いた。


「すみませんね。ほそぼそと経営していますので、なんにもありませんが」

「いえ。街の中心部とは離れているし、馬も預かってくれた。もう、充分な待遇です」

「そうですか」

 私は、ゆっくりと窓から外を見た。

 ここから街の中心までかなり遠いのに、結構声が聞こえる。でも、静かな方なんだろう。

 近くには、ジョニーさんの友人が営んでいる馬小屋がある。そこに、ウォル達は預けられた。


「えーっと?あなた達は、お上りさんで…」

 すると、アンドリューの舌打ちを、クレイグがせきばらいをして相殺した。

「そうですよ。俺達は銃士になりたくって来たんです」

「…そこの、お嬢さん達は?」

 ジョニーが、私達に目を向ける。私はロザリーと目を見合わせ、答えに迷っていたら、アンドリューがぼそりと呟いた。


「…よ…家政婦」

「家政婦!?」

 ロザリーが、目を吊り上げる。…犬が怒ったような…いや、猫?まあ、とにかく、鬼の形相。


「メイドやめたんですけど?というか、私が仕えているのは、サラ様だけなんですけど!?」

「ロザリー。メイドをやめたなら、私のこと…」

「サラ様は黙っていてください!」

 ロザリーさん。怖いわよ。冷たい態度のアンドリューを、ロザリーが必死に睨む。


「まあまあ。ロザリー。アンドリューはばかだから、しょうがないよ」

「…最近、ばかばっかり言われまくってる気がする」

「あれー?もしかして、だじゃれ?」

「あ?」

 彼は背の高いクレイグに、鋭い目を向ける。


「ジョニー。アンドリューさん達は、サラ様の騎士なんですよ」

 階段を登って来たマリオンが、そう説明した。騎士だなんて…と思って横を見ると、アンドリューの顔が真っ赤になっている。その顔が見えないように、下を向き続けて。

 ちょっとイラつき気味のアンドリューも、マリオンの前じゃあ、形無しね。

「ね?アンドリューさん?」

「…」

 マリオンの声…怖い。あの城の人間は、結構タフなのかもね。


「ねえ、マリオン。そういえば、あなたはいつ結婚したの?解雇されてから、まだ三日も経ってないはず…」

 私が尋ねると、マリオンが「ああ」と、平然と答えた。

「ジョニーとは、あの城に行く前に、結婚をしていました。なので、定期的に会っていましたし、普通に遠距離結婚生活をしていたんですよ」

「…」

 あの城の人間は、本当にタフね。



「とりあえず、作戦を決めよう」

 クレイグが声をかけ、私達は小さな丸い机の周りに座る。すかさず、ロザリーが紅茶を淹れる。


「なあ、サラ。あの狼達は、ルシフェル伯爵の差し金で合っているのか?」

「ええ。ね?アンドリュー」

 私が尋ねると、アンドリューが静かに頷いた。ロザリーが私とクレイグの横に座り、なぜか彼女も頷いた。


「あの狼、百パーセント、サラ様を狙っていました。サラ様が乗っていた馬には、一切目もくれず…もちろん、狼達にとって、サラ様がいいターゲットだったのかもしれません。しかし、結構な数の狼の中で、一匹も馬を狙わないのはおかしい。確実に、伯爵様の仕業と言えます」

 彼女の説得力のある言葉に、私達は自然と黙り込む。

 不意に、あの時のことを思い出してしまった。枝でなんとかしようとしても、全然恐れない、あの狼を…

 もし、アンドリューがいなかったら、どうなっていただろう?そう思うだけで、背中が一気に寒くなる。

 すると、アンドリューが机をバンと叩いて立ち上がった。


「とにかく、奴らはバンパイアだ。日が出ていたら、何にも出来ない、烏合の衆だ」

 すると、彼はクレイグを真剣な目で見つめた。

「で、今度は俺達の生活の問題だ。とりあえず、俺達はすぐに銃士隊に入らねーといけない。そうじゃないと、収入が一切入らないからな」

「俺のマジックでは?」

「金にならん」

 アンドリューがぶった切って、今度は私達の方を向く。

「お前らは、夜でもバンパイアが襲って来ない方法を探しとけ。毎日毎日、俺達は見張り番は出来ないからな」

 ロザリーが、目をそらすが、私はとりあえず笑って答えた。

「その後については、後で考えよう。オーケー?」

 アンドリューの声に、私達は同時に「オーケー!」と、叫んだ。

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